*西尾作品「猫/物/語 黒」のネタばれ
*寧ろほぼ本文そのまんま・抜粋しまくり
*突然始まり突然終わる
*話の内容がものすごい
*阿良々木兄妹が折原兄弟に見えたのが原因
*舞流じゃなくて臨也が変態   
*ビジュアルだけで読んでほしい感じ
*Hさんはもちろん♀化したあの人
*おかしいところ盛り沢山
*閲覧は完全自己責任・責任は取れません
*それでもOKなひとだけドウゾ↓










「礼を言わせてもらおう、ありがとう舞流」
「礼には及ぶよ」


こんな初歩的な質問を受けたのは、何せ初めてだったもんね―、と、舞流は胸を撫で下ろすようにした。


「まぁ、色々言っちゃったけどさ、臨兄。人を好きになるなんて、犬が吼えるくらい当たり前のことなんだから、そんな思い悩むことなんかないんだよ」
「そうか、当たり前か」
「うん。普通だよ」
「クラスに気になる女子がいるのは普通」
「普通!」
「授業中、黒板よりもその子のほうを見ちゃうのも普通」
「普通!」
「登下校中その子の姿を探してしまうのも、偶然会えるかなーとか考えてしまうのも、本を買うときに色々想像してしまうのも!」
「普通!」
「その子の胸を揉みたいと思うのも!」
「違う」


会話が止まった。


「ん?」
「ん?」


お互い、腹の内を探るかのように視線を交わす。
何故会話が止まってしまったのか、両者共に分からないのだ。


「え?あれ?舞流、お前、一体何言ってんの?」
「えええ!?わ、私のほうなの!?」
「お前も正座したほうがいいんじゃない?」
「あ、はい、わかりました」


困惑のままに正座する舞流。
正座した兄と正座した妹が向きあった。
なんだここは、茶の席か。


「いや、だからさー。そのHさんの胸部が非常に魅力的なので、触りたい、揉みたいって思うわけじゃん。今そういう話をしてるんだよ」
「・・・・・・あれ?私の頭が悪いのかな、何故か臨兄の言ってることが、理解できるのに理解できない。台詞を聞いた感想が『聞いてねぇよ』と『訊いてねぇよ』の二通りしか思い浮かばない」
「はぁ?お前も仕方ないやつだなぁ。やれやれ、出来の悪い妹を持つとお兄ちゃんは苦労するよ」


・・・この手のひらの返しようは我ながら身も蓋もなく最高だと思う。


「まぁあんまり知られてないことと言うか、その子は実は巨乳だったりして、それはもう揉むしかないよねー!と」
「ちょっとごめん臨兄、触るとか揉むとか露骨な言葉使わないで」
「ん?そう?」


寛大な俺は妹の申し出を受け入れる。


「じゃぁ、タッチするしかないわけじゃん!」
「可愛くはなったけどさ」


なんだかさー、と舞流は憂鬱に身を任せる。
俺を見る目が兄を見る目じゃなくて変態を見る目になっているような気がするのは、はたして錯覚なのだろうか。
いやまぁ錯覚だろう。
今トリックアートはやってるし。


「で、つまりさ、要するに俺は気がつけばHさんの胸にタッチしたいということばかり考えているわけなんだけどこれは恋でいいんだよね」
「違う」


舞流は断固として否定した。
ぬう。
この頑固者め。


「でもまぁ違うとは言ったけど、それは別の意味で普通なんだって」
「そうなのか」
「それは当たり前だよ臨兄!」
「当たり前」
「それは恋じゃなくて性欲だよ!」
「欲!」


欲か・・・・・。
それはよくないな。


「ていうか性欲なくして恋は生まれないんじゃない?」
「黙れ。あ、ごめん臨兄、私としたことが突っ込みのセレクト間違えちゃったよ。死ね」


愚にもつかないようなことをいきなり名言っぽく言うな、と舞流は舌打ちした。
上品じゃない奴め。
まぁ知ってたけど。


「死なないよ。悪いがお前の兄は不死身だ」
「臨兄が不死身だったら私だって不死身だよ!」


まったく、と言って。
まったくまったく、と言って。
舞流はずいいっと、正座をしたままで器用に俺との距離を詰めてきた。
にじり寄る、という表現が正しい。


「何」
「試してみようと思って」
「試す?お前、この兄を試そうと言うのか」
「うん。その程度の兄を試そうと言うんだ」


そして舞流はそこでぐいっと、九瑠璃ほどでかいとはいえないがまだでかめの胸を俺に突き出してきた。


「触れ臨兄!」


触った。
無言で。無表情で。
即決即断、即座にタッチした。


「ぎゃーっ!!」


光速に匹敵するであろう俺のスピードに驚いたのか、悲鳴をあげて後ろ向きに倒れこみそうになる舞流だったが、俺はとっさに両手にぐっと力を込めてなんとか舞流の上半身を支えてやった。
いや。
つまりは舞流の胸を、指が食い込むほどに、がっしり鷲づかみにしたということなんだけど。
タッチならぬキャッチである。


「痛いわ―っ!!」


恩知らず、とはこのことか。
危うく、ベッドで後頭部を強打しかねなかった危機から救ってやった、言わば命の恩人である俺に対し、舞流は上半身を凄まじい勢いで俺のほうへと、さながら振り子のごとく起してきて、そのまま俺にヘッドバッドをかましてきた。
額と額が衝突する。
視界の中で火花が散った。
つか眼鏡、眼鏡当たって痛い。
それでも俺は舞流の胸から手を離さなかった。
後ろに吹っ飛びそうになったのを、彼女の胸を命綱に防いだのだ。


「だから痛いっ!!離せ離せ!離さんかっ!!」
「離さんか?ああ、死んだ飼い犬の灰をばらまいて桜を咲かせたというあのご老体のことか」
「言いがかりみたいな言葉遊びをしている心の余裕があったら早くその手離してよ!」
「それは常識から手を離せ的な意味合い?」
「常識からはすでに手ぇ離してるよお前は!もっとありふれた意味合いだーっ!」


妹からお前呼ばわりされるまでもなく。
俺は後方に倒れかかった体を起こしたところで、彼女の出っ張りに引っかけていた指を外したのだった。
ぷりぷり起こる舞流。
実にプリティだ。
見た目だけ。


「本当今、何の迷いもなかったよね、言われた瞬間脳を経由しない反射神経で揉みに来たよね」
「何を失礼な、兄は妹の胸なんか揉まないよ」
「いま思いっきり揉んだじゃん!」
「違う、むしろ逆だよ。お前の胸が俺の手のひらを揉んできたんじゃないか」
「なにその気持ち悪い文章!?」
「実の兄の手を揉みに来るとは、お前はとんだ変態妹だな」
「逆も何もその発想はありえないし・・・」


気付けば、スラップスティック的にひと悶着あった結果なのだろう。俺も舞流も、正座が崩れてしまっていた。


「あーもー!臨兄妹のおっぱい触りすぎ!」
「何怒ってんの、お前が自分から『触れ』って言ったんじゃん。いわばお前が俺を誘惑したんだよ」
「誘惑ー?」


言ってじろりと舞流は俺をにらむ。
殺人者の眼だ。


「ふんだ、臨兄なんて原型も残んないほうがいいよ!明日の朝はまたバールで起こしに来るからね!」
「無駄だよ。生憎だけど、俺に凶器は通用しない」


舞流の脅しを、鼻で笑う俺。


「俺は非実在青少年だよ、条例で保護されてる」
「格好いい―っ!?」


まぁ結局。
自らの行動に恥じることは一つもないんだけど。


「で、どうだった?」
「ん?」
「だから、どうだった?」
「ああ、成程、いもうとのおっぱいにタッチした感想を聞いてるわけね」


まあ訊きたくもなるだろう。
自分が長い年月をかけて育てている所有物が、他の人間からしてどうなのかというのが気になるというのは、自然な発想だ。
ここでいい加減なおためごかしを言うべきではないと考え、俺はやや思案して、それから率直に、そして端的に、感想を述べた。


「七十六点のB評価!」
「微妙!」


将来に期待だ。
とはいえこの場合採点者であるところの俺は妹の胸にしかタッチした事が無いので、採点基準に信憑性が無かったりもする。


「で、結局どういうことになるの?」
「どういうことって?」
「いや、だからその『お試し』とやらでどういう結論が導き出されるんだよ」
「えーっとね!」


舞流は俺からの質問を受けて、考える。まるで聞かれるまでは何も考えていなかった不用意ささえ感じられる。それは不思議な対応だった。
こいつ俺におっぱい揉まれたかっただけじゃないの?
いや、揉んでないけど。
寧ろ手のひらを胸で揉まれたんだけど。
とんだマッサージ。


「臨兄、欲求不満じゃない?」
「なんと!」


最低の結果が導き出された。


「ほら、そう言えばさっき、エッチな本が買えない、エッチな本が買えない、エッチな本が買えないって、言ってたじゃん!」
「三回も言ってねぇよ」


連呼なんかするか。


「それが逆効果なんだよ!まるきりの逆効果!性欲を恋と取り違えてしまった臨兄は、そうやって欲求不満のインフレスパイラルを起こしちゃってるんだよ!」
「インフレスパイラル・・・」


なんだよそれ。
デフレスパイラルなら聞いたことあるけど。


「なんてことだ・・・・・・インフレスパイラルだなんて・・・そんな007みたいな現象が俺の脳内で起こっているとお前は言うのか・・・」
「うん、だから私の胸にだって見境なくタッチしちゃうんだよ」
「タッチしちゃうんだ・・・・・・タッチパネルみたいなその胸に」
「タッチパネルって平面じゃねーか!!」


殴打を受けた。
そこで俺は引っ張ってみる。


「はっ。つまりタッチパネルで、恋の暗証番号を入力するというわけだね」
「うまくないし!」
「そして預金を引き出すんだ」
「うまい!」


怒り心頭な妹ではあったけれど、しかしそこは俺の妹らしくジャッジは公平だった。


「問題だね」


と、舞流。


「これがまだ私の胸だったからよかったようなものだけど、だけどどうよ臨兄。これ以上欲求不満が進行したらいよいよ本命であるHさんの胸にも手を出しかねない」
「ふむ、文字通り手を出しかねないというわけか・・・ていうかお前の胸だったからよかったようなものなんだな」
「良かったでしょ!」
「悪くはなかった」


何の会話だ。


「しかし、そもそもその伝でいくと、俺はHさんから『触れ!』と胸を突きだされるという設定になるんだけどさぁ・・・・・」


Hさんはそんなことを言わない。
想像もできない。
つか後が怖い。
しかし、そうか、欲求不満か。
納得できないわけでもなく、その通りだという気もする。
すっきりした気分にさせてくれちゃうじゃんか。
そうか、この気持ちは欲求不満だったのか。


「なるほどなー、そういうことだったのか」
「うん。危ないところだったね臨兄。危うく好きでもなんでもない、たかが胸が魅力的だというだけのクラスメイトに恋をしていると勘違いするところだったよ!」
「そうかそうか。これが本当の『勘違いしないで!』ってことだね」
「この場合、Hさんにしてみればそれ、切実なお願いだよね」
「むう」


確かに。
持て余した性欲を恋と勘違いした揚句に、しかも何かをまかり間違えて告白でもした日には、始末に負えない。
災難としか言いようがない。
それでも。
というか。
Hさんの性格を考慮すれば―――そんな災難でも、忍受してしまうのかもしれないけれど。
だからこそ。
僕は自分を律するべきなのだ。
律さなければならない。










・・・・・・・・・・
後悔はし・・・ていないわけでもなくそうでもなくいやでも楽しかったり・・・orz











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