*静雄→新宿住まい 臨也→池袋住まい  そしてキャラすら違う
*CP要素は薄め
*帝人視点
*無駄に長い









池袋という街に来て数日しか経たぬうちにこの紀田正臣というユルさ丸出しの友人のおかげでインパクトのかなり強い出会いに連続して出会っている。
ロシア人の経営する寿司屋やらオタク全開の人々やら世間を騒がす黒バイクやら。
非日常を欲する帝人としては、特に黒バイクに対し、憧れにも似た思いを抱いていた。
首無しライダーとも称されるあの人物は最早人間なのかそうでないのか噂される時点で、自分より遥か上の立場にいるように感じられる。
ある種羨ましいとすら思う。


だが帝人は非日常ならば全方位で興味がある。
つまりもし帝人が池袋に来た時点で黒バイクがいなかったとしても、帝人はほかの非日常の要素に心奪われていた可能性も無きにしも非ずである。


そう。


他の要素。


この池袋という街にある非日常とは帝人にとって数限りなく、


その中のトップとも言うべきある人物と、


杏里をイジメていた女子高生をものすごい方法で撃退した人物と、


帝人は現在進行形ingで、


相対中だったりした。












「俺は折原臨也。よろしく」


そう言った目の前の男は手も差し出さずにこにこと笑っていた。
池袋で関わってはいけない人間として正臣から名前は聞いてはいたが、何回聞いても変な名前だなとは思ったが口が裂けてもそれは言えない。
というかその前に人のことが言えない。
案の定自己紹介してみたら感想としてエアコンみたいな名前だと言われてしまった。
しかし聞いたことのない発想だ。
思わず納得しそうになる。
しかしこの折原臨也という人物が帝人には到底そこまで危険な人物には思えなかった。
そう思ったのだが、隣にいる正臣の顔が心なしか青ざめていることがかなり気にかかる。
杏里は杏里で折原臨也という人物を知らなかったようで、どうすればいいのか分からないらしく、オドオドとせわしなく視線をさまよわせていた。
そんな2人を気にしながらちらちらと顔を窺っていると、ようやく正臣が口を開いた。


「えっと・・・どうしたんすか、珍しいですね、こんなところに」
「別に池袋に住んでるんだからおかしくはないでしょ?・・・まぁ、ちょっと用事があったんだよね、・・・君に」
「え?」


臨也の赤い目が帝人を射抜く。
見たことのない血の色のような瞳に、つい見とれる。


「帝人に、すか?っちょ、臨也さん何考えて、」
「そんな悪いこと考えてないよ。少なくともシズちゃんよりはいいことさ」
「・・・静雄さんすか」
「・・・静雄?」
「そう、シズちゃん。アイツがわざわざ新宿から来る前に用事終わらせたくてねぇ。今、いいかい?」
「いや、帝人は今から俺と杏里とで行くところが・・・」
「え、あ、あの?」


2人の会話から全く話の内容が掴めず、あわててとりあえず自分に用があるらしい臨也に話しかけようとした時、




目の前の臨也がものすごい音付きで横っとびに吹っ飛んだ。




「・・・え?」


しばし呆然としていた帝人だったが我に返ってあわてて横を見ると、臨也が苦悶の表情で蹲っていた。


「い、臨也さん!?」


イマイチ状況が掴めぬまま、蹲ったままの臨也に駆け寄ろうとするが、すぐに帝人の足は止まる。
まず目に入ったのはゴミ箱。
臨也を豪快に吹っ飛ばしたコンビニのゴミ箱である。
しかし何故こんなものが飛んできたのかを考える以前に、帝人は動けなかった。
臨也の表情。
先ほどの人当たりの良さそうな笑みはどこにも見当たらない。


そこにあるのは


「シズ・・・ちゃん・・・っ!!!」


臨也から発せられる、凄まじいまでの怒気。




「いーざーや」

その怒気が、わざと間延びさせたような声で、さらに膨れ上がる。
帝人が振り返った先にいたのは、バーテンダー服を身にまとった金髪サングラスの長身の男だった。
アスファルトの上にすらりと立ったその男は、口の端を歪めながら帝人を見下ろしていた。
否。
臨也を見下ろしていた。


「・・・わざわざ新宿から御苦労さま・・・。てかもう二度と池袋来ないでって言ったよね?ね?」
「んなつめてーこというなよ、丁度用があったからわざわざ会いに来てやったのに」
「っ何しに来た帰れっ!!!」


ゆらりと立ち上がった臨也が言うや否や、袖口からナイフを取りたし凄まじいスピードで男に投げつけた。
そのナイフを男は苦も無く受け止める。


「や、やべぇ、静雄だ・・・!!」


それを見て我に返ったらしい正臣が後ずさる。どうやらバーテン服の男は静雄、というらしい。


「し、静雄、さん?」
「そうだよ!昨日教えたろ!?新宿に住んでる一番関わっちゃいけね―奴!!平和島静雄!!」


―――平和島静雄。新宿主体だからまぁ会わないだろうが一応気をつけろと言われていた人物。正臣の言葉で危険だとは聞いていたが、目の前のことが非現実的すぎて方程式が合わなさすぎて分からなかった。
しかし確かに、分かりやすい危険さではある。
―――素手でナイフの刃を受け止める時点で分かりやすすぎである。


その静雄と臨也は道のど真ん中で死闘を繰り広げてしまっていた。
それを見物しようという馬鹿は流石にいない。先程までいたはずの通行人は既に逃げてしまったようだ。
その時、投げつけられたナイフを体を軽くひねることでよけた静雄が、その回転のまま臨也の腹部めがけて蹴りを繰り出した。
何気なく繰り出された蹴りがとっさによけようとした臨也の脇腹をかすめ、


「っがっ!!?」


臨也の体が宙を舞った。
そのままの勢いで臨也の痩身が数メートル吹っ飛ぶ。数回アスファルトに叩きつけられた後、何とか勢いを殺して体勢を立て直したが、脇腹を押えたまま立ち上がることはできないらしい。
力量差以前に、静雄のパワーが圧倒的だった。
そんな光景を未だポケットに手を突っこんだままの静雄が涼しげな顔で見つめていた。
その視線が、ふと帝人を捉える。


「・・・え」

サングラスの向こうの瞳が動けない帝人に向かって笑いかけ、


「―――ハズレ」


すっと体をずらした静雄の向こうから、臨也のナイフが帝人に一直線に飛んでいき、


「・・・え?」
「っ帝人!!」


帝人に刺さ


らなかった。


来るべき痛みが来ないことを不思議に思った帝人がそろそろと目をあけると、目の前に白い割烹着を来たデカすぎる背中があった。


「ナーイス、サイモン久しぶり!!」


いつのまにか帝人の近くまで移動していた静雄が、満面の笑みでサイモンの肩をばしばしと叩きまくる。
その瞳には、先程まで帝人に向けていた笑みは微塵も見当たらない。


「ちょっとサイモンそこどいてよ!!シズちゃん殺せないじゃんか!!?」
「ンー、イザーヤ、暴力ダメネー。ワガハイモ今ノ真剣白羽取リハアブナカッタデゴザルヨー」
「うるさいな・・・!!ってこらぁっ!!逃げんなシズちゃん!静雄ーっ!!!!」
「あはははは!!挨拶もすんだしそろそろ帰るぜ!じゃーな臨也くん!!」
「逃がすかっ・・・!!ってサイモン邪魔だってばっ!!」


臨也の叫びはどこ吹く風のように颯爽と立ち去ろうとする静雄。
そこでふとその瞳が帝人たちを再び捉えた。


「よぉ、紀田じゃねぇか。今のうちに逃げたほうがいいぜ」
「え、あ・・・、はい」
「・・・そっちも、今度ゆっくり会おうぜ、竜ヶ峰帝人」
「・・・・は?」


突然名前を呼ばれた事にとっさに反応できず、間抜けな声を発する帝人に笑いかけて、


「じゃーな」


今度こそ背を向けた。











平和島静雄という男は折原臨也という男と折り合いがかなり悪い。
しかし静雄自身は臨也の事をかなり気に入っているらしく、たびたび池袋に来ては臨也に追いかけまわされる様子がよく見受けられた。
その顔に浮かぶ楽しげな笑みを見て思う。


―――静雄さんは絶対に臨也さんにはあんな風には笑わない。
―――セルティさんにも、門田さんにも、あんな風には笑わない。
―――僕に向ける笑顔っていったら・・・


―――良い獲物が見つかった、っていう目なのかな・・・?
―――・・・やっぱり怖いかも。







そして少年は、今日も非日常を夢見て、パソコンを開く。



その向こうで、その捕食者が笑っているのも知らずに―――










・・・・・・・・・・
以上、立場逆転SSでしたー。
って静雄怖ぇぇぇええええーーー!!!!!!←
あれーおかしいなーこんなことにはならないはずだったのに・・・;;
そして無駄に長いし。orz


もっと読みやすい文章を目指して精進しますね・・・!!
感想などありましたらMailから感想下さると嬉しいです。
最後まで読んで下さりありがとうございました***








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