み ず か
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雨戸  

バタン、とドアを閉める音で目が覚めた。
ぼんやりした視線の先で機械音とともにライトが瞬き、それが向かいの駐車場のものだと気付いた。
車道沿いの電灯は周辺の景色だけでなく自分がまとった蜘蛛の巣まで照らしている。
腿に乗っていたスマホを見ると21時を回っていた。
ハンドルに手を掛けて伸びをし、車から降りたと思われる男性を目で追う。
彼は買い出し帰りなのか、大きな白いビニール袋をよろよろしながら運んでいく。
向かったのは目と鼻の先にあるトタン壁の家だった。
電灯の照らした部分だけその鈍くて深い青色の壁を浮かび上がらせている。
家の中からは少しも光が漏れていない。
玄関にたどり着くと彼は買い物袋を何かが植えられた様子の植木鉢の隣に置き、ポケットをまさぐって鍵を取り出した。
鍵を差し込み回すと引き戸を開けて中に入る。
そこまで見届けて一旦水分補給すると、改めて彼の入っていった家を眺める。
しかしいつまで経っても家に光がともらない。
心配になり、じっと目を凝らして気付く。
雨戸がぴっちり閉まっているのだ。
「なぁんだ」
自分に呆れて大きなため息がこぼれた。
今夜の成果は上々だ。
ここまで来た道順を思い返しながら次回のことを考える。
雨戸の向こうの彼の様子を知るには一体何が必要だろうか。
[ 呼吸 ]  12th,March,2024
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