み ず か
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(+16)重機の潮干狩り  

正面の山が削られた。
職場の私のデスクから見える窓の外、ずっと向こうの真っ正面の山。
無駄に眺めだけはよかったその景色に突如ヒビが入ったわけで。

「どこの砕石だろうね」
「サイセキ?」

椅子ごと振り返る。
後ろに立つ先輩の視線は数秒前の私とだいたい同じ景色に向けられていた。

「砕石業者。山削ってセメントの原料にしたり、線路の敷石作ったりするやつ」
「あー、砕石ですか。聞きなれない珍しい石の名前かと思いました、宝石の仲間みたいな」
「そうだったらいいのになあ」
「未知の石を狙って山を削る、トレジャーハンターみたいですね」
「実際は違うんだけどね」

ぼーっと眺める窓の外、重機が順調に山を、削るというよりはかじっている。
大掛かりな作業だろうに、遠くから見ると潮干狩り並みの動きにしか見えない。

「あの山、なくなっちゃうんですかね」
「そう簡単にはなくならないだろ、山だし。塵も積もればなんとやらって言うけど、積もった量が尋常じゃないからな。お前のそこの書類みたいに」

先輩の指差す先には、私の座高と同じ高さになりそうな書類の山がある。
こっちの山はいくらこなしてもなくなる気配すらない。

「確かにそう簡単にはなくなりそうもないですね」
「まあ、崩れないようには気をつけて」

追加の書類を山に乗せ、先輩の背中が離れていく。
不揃いな紙の山、どうせいつかはシュレッダー行きになるくせに。
窓の外のずっと向こう、重機がのそのそと潮干狩りしている。
桜貝でも見つけたら教えてくれと、重い腕を目の前の山に伸ばした。
[ no.+ ]  9th,December,2015
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