み ず か
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(れ)歴然たる事実と  [追記]

はっきりしないのは嫌いだ、と彼は明瞭に答えた。

「前置きが長すぎる、言いたいことがあるなら簡潔に」

糾弾するような彼の言葉運びに、私はここへ何をしに来たのかさえ忘れてしまいそうになった。
気を取り直して咳払いをすると、大きく息を吸い込んで。

「どうして、はっきり断ってくれないんですか」
「何の話だよ」
「先生の話です、その気がないなら相手にしないでください」

ああこれは私のわがままだ、彼が私の言いなりになる理由は一つもない。
自分の放った言葉の身勝手さに顔が熱くなる。

「みんなは本気でチョコを用意してきてるんです、もちろん私だって」

だからといって、傾いたコップから零れ落ちる水は止まらない。
言いたいことかどうかでさえ定かではない言葉の粒が落ちては消える。

「もらうだけもらって気を持たせるなんて、ひどいと思います」
「受け取ったところを見てたのか」
「見ていたっていなくたって、そういう態度はやめてほしいんです」

ぼやけ始めた視界の中で、彼が戸惑いがちに首を傾げる。


「だから、俺が受け取ったところを見たのか? そうだって言うなら、ただの見間違いだ」

私の髪を舞い上げる風が春の訪れを告げている。
その髪を撫でつけるように大きな手のひらが私の頭に置かれて、教師ではない彼の瞳が静かに笑う。

「もらったのはお前からのチョコだけ、わかってるだろ?」

苦し紛れに下手な笑顔を見せる私に、先生の口元が緩む。

「ほんっと、馬鹿なやつ」
[ 永久に眠れ ]  18th,March,2013
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