- as long as #1
何の変哲もないホームセンターの一角で、それを見付けたのはかなり偶然に近いことだった。 なぜならそこは、洗剤や入浴剤といった私が好んで向かうコーナーからは随分離れたところだから。 これから起こるすべてのことは、1000ピースのパズルから始まった。
「課題出してきた?」 「出した出した。超めんどかった!」 「だよね。大学入ってまで工作とか、ないわー」
そうかな、結構面白かったけど。 誰かの他愛ない会話に心の中で参加しつつ、お気に入りのボールペンを指先でくるりと回す。 高校のときに買ったものだけれど、それから5年近く経った今もインクを取り替えながら使い続けているそれでないと、どうも手に馴染まない。 ノートをとるときも愛用している。 ただ、書き間違いを消しゴムで直せないのは少し不便かもしれない。 あまり気にしたこともないけれど。
課題は歯車作りだった。 文学部とはいっても、大学では広域ナントカという科目領域があって、専攻以外の分野も履修しなければいけないことになっている。 この授業ではいわゆる理科系のことを学ぶのだけれど、割とアクティブな教授の嗜好で、実験をやってみたり何か作ってみたりということも少なくない。 それを面倒臭いと感じて授業登録を撤回をする人が多いのか、4月初めにはいっぱいだった広い講義室も、6月頭の今や空席の方が目立つようになった。 そして残った物好きのひとりが、この私だ。
浪人1年、在籍1年と3ヶ月め。 彼と初めて言葉を交わしたのは、それから数週間ほど後のことだった。
[ no.# ] 11th,May,2011 BACK
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