み ず か
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(ま)睫毛が濡れて  

雨が降っていた。
すぐ隣で見下ろす君のうつむいた表情からは何も読み取れなくて、雨のあがる様子もない薄鼠色の空とその表情とを行ったり来たりする僕の視線。
止まない雨の下、その音に紛れて息をするのが精一杯だった。

ふいに、君がつぶやいた。
「やまないね」と。
僕はとっさに「うん」と答えて、「やまなくていい」と付け足した。
君の濡れた髪が少し揺れ、視線と視線がぶつかった。
したたる雫が薄紅色の頬をつたう、瞼につたう。
僕の決死の一言までは、喉の奥からあと数センチ。
[ キスの甘さ ]  22nd,March,2011
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