- (す)裾を掴んでた
歩くのが速い。 そんなことはわかっていたけれど、いざ「隣を歩く」ことになったらすごく戸惑った。 彼のペースは変わらない。 いや、むしろ前より速くなっている気さえする。 相変わらず私は小走りでついていき、時々立ち止まって振り返る彼に渋い顔を向ける。 けれど隣を歩くようになってから、ひとつだけ許可されたことがある。
「おい、あんま引っ張んな」 「いいじゃん、いいって言ったじゃん」
もう離さないように、どこにも行かせないように。 ひとりで置いていかれないように、今日も私は指先にきゅっと力をこめた。
[ キスの甘さ ] 7th,March,2011 BACK
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