Mistletoe
「お疲れ様でした〜」
12月24日、クリスマスイブ。
の、少し前。
生放送の歌番組への出演を終えて、楽屋へと戻る廊下。
すれ違う共演者やスタッフと挨拶を交わしながら、歩いていたわたしは、ふと足を止めた。
「亮太くん…」
視線の先に、壁にもたれたままこちらを見つめる人の姿を見つけたから。
「…お疲れ様」
呼びかけられたその人は、おもむろに体を起こすと、わたしの横を通り過ぎて行く。
彼の動きに合わせて、ふわっと揺れる栗色の髪と、栗色の瞳。
通り過ぎざまに、彼は小さな声でつぶやいた。
「1時間後、ツリーの前で…ね、僕の可愛い天使さん?」
ドキッとして振り向いた時には、彼は素知らぬ顔で、スタッフに声をかけていた。
1時間後、ツリーの前で。
テレビ局の裏手に広がる、遊歩道。
キレイにイルミネーションされた木々が立ち並んでいる。
その脇に佇む1本のモミの木。
人が集まるスポットになるほど、大きくはないけれど。
わたしはふと、モモちゃんから聞いた話を思い出す。
クリスマスイブの日、その木の下で想いを告げると、その相手と結ばれる。
密かにそんなロマンチックな噂があるのだと。
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