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2014/03/15



小ネタ




この人と迎える朝は苦手だ。
皺くちゃのシーツに包まってすうすうと寝息を立てるその姿が恨めしくて思わず足で背中を蹴飛ばすと奴は面白いくらい綺麗に転がりながら「うぎゃ!」と間抜けな声と共にダイブした。
が、次の瞬間には「何するんだ!!」と飛び起きて私を睨む目は今日も私と似ている。
「おはようございます白豚さん」
「豚じゃねえよ白澤だ!!」
「ふがふがといびきかいてる姿は豚そのものでしたが?」
「え、嘘!僕いびきかいてる?」
寝癖をつけたまま焦って鼻を抑える姿が滑稽である。嗚呼愉快。
けれども寝相は良いって言われるのに、と呟くそれは彼が誰かと何度も床を共にしてる証拠であり、また彼がまるで死んでいるかのように眠る証明でもあった。
ううんと首を捻る彼を横目に布団を出て身支度を整えると。
「ねぇ、そんないびき酷かった?」
「ええそれはもう」
「ええ〜なんだろ、ストレスとか?」
そんなものを貯め込まない気質なのは自分で分かっているはずなのに、茶化すように笑いながらそう聞いてくる。性質が悪い。
「どっちがストレス溜めてると思ってるんですか?」
「あはは!」
無邪気に笑うその顔が憎たらしい。この後出てくる言葉も分かっているからこそ、余計に。
「……さて、僕もそろそろお店でないとネ」
いつの間にか白衣を身に纏い頭に布を巻きながら諭すようにそう言われる。
そう、言われなくても分かっているのだ。
いつもなら怠惰にしていたい朝も、軽口を言い合ってじゃれながら過ごす午前を、この男は許そうとはしない。
「またね、鬼灯」
この人と迎える朝は苦手だ。酷く、感傷的になってしまう。



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