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2014/03/15



社会人パロで同棲設定でR18注意




出張というのは何故何日も家を空けなければいけないのだろう。
新幹線に遅れると、笠松が慌ただしく玄関を出て行ってから三日が経った。
お土産期待しているどころか、いってらっしゃいの一言も言わせてくれないなんて酷い男だ。
パリッとしたシャツの背中も、キスをした後に香る彼の匂いも、色褪せていく。
明日の夕方に帰ってくる予定だと聞いているが、この調子じゃ後一日も持つ気がしない。
我ながら呆れてしまうなと吐き出した溜息は嘲笑となって消える。
けれど、耐えきれそうにない。
身体の奥で燻る甘い欲を、もう抑えきれなくなっていた。

ベットに腰かけて、ひとつ深呼吸する。
馬鹿みたいに二人で身体を合わせた夜はもう両手では足りないほどなのに、一人でこういう事をするのは初めてだ。
ずっと傍に居て満たしてもらっていたから、こうなることに耐性がないのだ。
彼に甘えすぎていたのかもなと、そう思うと胸の奥がずくんと痛んだ。
シャツもズボンも全部取っ払ってベットへ横たわる。
ボクサーパンツも、思い切って脱ぎ捨てた。
ゆるゆると手を伸ばして芯に触れると、そこはもう首を擡げて震えていた。
慣れないながらにも必死でそこを擦れば、浅ましい身体は快楽に埋もれていく。
くちくちと溢れる音に眩暈がする。指を鈴口に押し当てれば、鼻から抜けるような声が自然と漏れて思わず唇を噛んだ。
「んっ……ぁ、ふ……、っん」
抑えきれない嬌声が喉を伝って零れていく。腰がぴくりと震えて、止まらない。
「ん……んぅ、く」
彼の触り方を描くように胸の飾りを引っ掻いて、
爪先が痺れて、溢れ出たものが下肢を汚していって、狂ったように気持ちが、いい。
(でも、)
でもこれじゃない。欲しいのは、これじゃない。
(駄目、だ。イケない)
熱くなるほどに、どんどん欲しくなる。足りないと身体が叫んでじん、と下半身が熱くなる。
欲しい、こんな稚拙な指先じゃなくて、確かな、あの手でここに触れてほしい。
誤魔化すための行為が、余計に彼を求めてしまう。
「っ、ぁ……かさ、まつ」
呼んではいけないと分かってた筈なのに、口にしたらもう、駄目だった。
「あ、笠松……んっ、笠松、ふぅ、」
熱い吐息も波打つ鼓動も、彼の感触には到底足りない。
きつく目を閉じる。もう、気付いてしまったこの感情を誤魔化すことはできない。
あまりにも、この身体は空白だ。
彼がいなければ何一つ満たせない。
こんなに狭いベット上で、開いた隙間を埋めたくて仕方ないんだ。
「っ、やだ、ゆき……ゆきっ」
掠れた声で繰り返す名前が、こんなに愛しいなんて。
逃げ道を探すかのように、もう一度ゆき、と呼んだ。
「なんだ、由孝」
「……え?」
ひゅっと、息が詰まった。
身体中が引き攣って、動きを止めても、後ろを振り返ることはできなかった。
何度も瞬きを繰り返し、ぶるぶると肩が震える。正常な反応なんてできるわけがなかった。
必死頭を動かして、やっとのことで部屋の入口へと目を向ければ、笠松は腕組みをして壁に寄りかかっていた。
「っ、」
さっきまで呼んでいた名前は、彼を目の前にすると途端にどこかへ消えてしまったかのように出てこない。
名前だけではない、どんな言葉も失ってしまった。
笠松はベットへ歩み寄って来ると、乱暴に上着を脱ぎ捨てて、ネクタイを放り投げる。
「由孝」
その音色に咄嗟に逃げなければ、と身体を起こそうとしたが、肩を掴まれそのままシーツの上へと戻される。
彼の切羽詰まったような顔で視界は埋め尽くされて、呼吸さえ儘ならなくなる。
全部、見られてしまった。
快楽に染まった下肢も、濡れた指も、恥辱に塗れた顔も、全部。
渇ききった喉は漸く彼へと言葉を投げかけた。
「なんで、帰って来るの、明日じゃ」
「クライアントの予定が開いてな、急遽明日の予定を今日にずらしたからそのまま帰れることになった」
「連絡、は……」
「した。メール入れたけど、この様子じゃ見てねぇだろうな」
するりと腹を撫でられて、びくりと身体が跳ねる。ついでとばかりにあ、なんて声が漏れて、嗚呼もう、死んでしまいたい。
「ううー……」
「そんな顔すんなよ」
これから可愛がってやるからなんて似合わない台詞を吐かれて、首筋を彼の舌が這う。
「や、んんっ」
「まさかお前が自慰だなんてな、想像してなかった」
淡々とした声でそう言われると、かっと頬が熱くなる。
ど突いてやろうと手を振り上げれば簡単に掴まれ、手の甲にかぷりと噛みつかれる。
「っあ、」
「ん、お前イッてないのか」
中途半端に昂っているそこに手を這わされ、我慢できずに口が勝手に告げる。
「笠松じゃ、ないと……ぁ、イカせ、て」
笠松は目を見開いた後、嬉しそうに目を細めて分かったと囁く。
ごつごつとした、俺より少しだけ大きいその手のひらが自身を包んで、一気に限界へと持っていかれる。
「ひゃ、っあ、あ、やぁ、」
待ちわびた感触に芯はすぐに蜜を吐き出した。
久しぶりの絶頂に肩で息をしていると、笠松は蕾を潤わせて、少しずつ指を押し込んできた。
「ん、はぁ……んく」
早急に指を増やされ、溶かされる。
笠松がベルトを外して自身を取り出し、ぴたりとそこに宛がわれる。
「息、してろよ」
「っは、ああ、ひ……っ、」
詰まりそうな呼吸をなんとか繋げる。
奥まで届いてようやく笠松が動きを止めた。はぁ、と溢れる吐息が熱い。
「なぁ、なんで一人でしてたんだよ」
「ん……」
「少しでも、寂しいって思ってくれたのか」
笠松の言葉に期待の色が乗っていて、ぎゅうっと胸が苦しくなる。
寂しい、その言葉をようやく俺も唇に乗せる。
身体はもうぐちゃぐちゃで、目に涙も浮かぶ。けれど構ってられなくてみっともない姿のまま呟く。
「さみ、しい…ふぅ…ゆきが、んっいないと、ぁ、寂しいっ、」
耐えられない。お前のいない生活なんて、一日だって嫌だ。
いつも俺の傍に居て、俺のことを満たしてよ、ゆき。
「……ったく、とんだ我侭だな」
煩い、と叫ぼうと彼を睨んだが、口元を緩ませて、目尻を下げながら俺を見つめるゆきに何も言えなくなる。
「出張がなくなるわけじゃねぇし、寂しくさせないとも約束できねえが、」
「っ!んぁ、や、動かな、ひぅ」
急に律動が始じまり、強い振動に俺は目の前の身体に縋ることしか出来なくなる。
「ふぁ、う、んぅ、っあ」
「どれだけ寂しくさせてもこうやって何度も愛してやるから、泣くな」
降ってくる優しい声をなんとか拾って必死でうん、と頷くと片手で頭をゆきの肩へと押し付けられ、抱きしめられた。
そのまま強く、奥まで揺さぶられる。
何度も何度も穿たれて、気付いたら達していた。
溢れだす精を止めるものは何もなくて二人の身体の隙間を塗りつぶすかのように白濁を撒き散らした。
ゆきも達していたようで腹の中に注がれるのを、遠い意識の中で感じていた。

柔らかく、髪を撫でる感覚に目を覚ますと、シーツも身体を清潔さを取り戻していた。
隣りに寄り添うゆきの姿に帰ってきたんだなと実感が湧いてきておかえり、と口にするとおはようだろとゆきは笑った。
「でも言ってなかっただろ」
「そうだな……ただいま」
「うん」
「身体大丈夫か」
「平気……身体、そのままでも良かったのに」
「腹壊すだろ馬鹿」
「なんか、外も中も全部笠松に満たされたみたいで、嬉しかったんだよ」
素直にそう口にするとお望みなら何度でもしてやるがと聞いてきたので、丁重にお断りする。
「そういえばゆき、お土産は?」
「あっ、いや、急いで帰って来たから……すまん」
「え、」
「……お前が寂しくて、俺がそうじゃないわけないだろ」
そう言う彼の顔は先ほどの俺のように真っ赤に染まっている。
なんだか可笑しくて、嬉しくて、つい吹き出すと笑うなと小突かれた。
「ねぇゆき、」
「ん?」
「次は、お土産期待してるね」
きっと次は、笑って出迎えれると思うから。

君恋しい
(寂しいと思う度に、満たしてほしい)



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