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2014/03/15



R15注意




眩暈がしそうだ。
指も、鼓動も、汗ですら、焦燥していた。
徐々に、でも確実に彼の中へと押し入っていく。
息を詰めた彼に思わず動きを止めると続けて、と掠れてた声で催促された。
「このまま、止められたっ、ほうが、辛い……っ」
「……分かった」
ゆっくりとまた進み始めると、また森山は震えた。
「ひ、ぐ」
引き攣るような声とぐしゃりと歪んだ顔に、何度もやめようという言葉が喉元から零れそうになった。
けれど、森山がそれを許さなかった。
やめたから殺すというくらい鋭い視線で訴えてきた。
森山も分かっていたのだ。
きっとここで縮こまってしまったら、先に進むことなどもう出来ないかもしれないとを。
「っ、」
「い、ぁ」
窮屈なその中を、押し出そうそうとする力に逆らいながら進む。
「悪い、もう少し我慢しろ」
「うぅ、はや、く」
「分かってる」
「ぁ、うく、は……」
傷つけないように、そればかりが思考を埋め尽くしていた。

漸く奥へ辿りついた時には、二人とも憔悴していた。
「っ、大丈夫か」
「う、ん」
いつからか強く閉じられていた瞼がそっと上がる。
そろそろと、シーツを掴んでいた手が下へと伸びていった。
揺らいでいる瞳は繋がっているそこに触れると嬉しそうに目を細めた。
「全部、入ってる」
「……ああ」
「うれし、笠松、嬉しいよ」
苦しさを滲ませた顔で、浅く息を吐きながら顔を真っ赤に染めて笑う森山を見た瞬間、心が真っ白になった。
「笠松……?」
不安そうに森山そう呟いた声で我に返る。
「どうしたんだ、笠松、どこか痛いのか……?」
「え、」
溢れるそれがぽたりぽたりと森山の胸を透明に塗りつぶしていくのを見て、漸く自分が泣いていると気付いた。
「っ、なんだ、これ」
手の平で拭っても、拭っても収まるどころかどんどん止まらなくなっていく。
漸く繋がったそこを見たとき、森山の笑った顔を見たときに襲ったあの感情は。
「森山、」
心臓を潰すくらいの衝動が、合間を満たすような、淡いこの想いは。
「森山、森山……」
「かさ、まつ」
呆然と俺を見つめる森山がおずおずと俺の顔を覗く。
「笠松、もしかして俺を抱けて嬉しいのか……?」
「っ、そうだよ!悪いか馬鹿!!」
愛しい、愛しいんだ。
嬉しくて仕方ないんだよ、お前がこの腕の中にいるのが。
「ふ、はは、あはは、」
「おい、笑うんじゃねえよ」
じろりと森山を睨もうとして、固まってしまった。
おい、てめぇだってなんだよその面、今にも泣きだしそうなくらい嬉しそうに笑いやがって。
「くそ……」
顔だって真っ赤に染まってて、すげぇ可愛いよ、馬鹿。
つられて赤くなってあろう顔を誤魔化そうと彼の目尻に溜まった涙を親指で拭うと、お返しと言わんばかりに舌で濡れた頬をなぞられる。
「本当に、仕方ないなお前は」
「お互い様だろ」
「そうだな……ほら、」
森山が、目の前で両手広げて呆れたように笑う。
「おいで」
迷わずそこへ飛び込んで、きつく抱きしめる。
「名前、呼んで」
「由孝、」
「うん」
「好きだ、由孝」
「うん、俺も」
好きだよ。
聞きなれた声が俺の頭に甘く、反響する。
このまま、いっしょくたに落ちてしまいそうな感覚に目を瞑る。
馬鹿みたいに俺は、この体温を、瞬間を、握りしめている。

浸透する鼓動
(君が、浸み込んでいく)



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