先輩と僕。部活後に二人で向かったのは屋上だった。そこで太陽が沈んでいくのを遠くに見つめながら僕は、先輩を突き放した。先輩もその程度だったんですねと思ってもいないことを口にして。がっかりでしたと付け加えれば先輩は俯いてしまった。それが、少なからず僕の言葉に傷付いての行動だと思いたい。同時に先輩に限ってそんなことはないと信じたい。そうでなきゃ僕は先輩にこれ以上何も言えなくなってしまう。もしもこのまま変わらずに過ごしていったなら先輩も僕もいつか後悔をする。それがわかっているからこんなことを言う。言わなきゃいけないんですよ、先輩。
「梓くん、ごめんね」
「意味がわからないです。それにそういうところに、がっかりしたんです」
「はは、そっかぁ……」
先輩は俯いたままそう言う。だけどもし目が合えば、今言っていることが本心でないと気づかれてしまいそうだから、助かった。でも。嘘をつくことなんか、なんてことないと思っていたのに。実際はギリギリで。少し気を抜いたら嘘ですよと言ってしまいそうになる。一刻も早く、ここから離れないと。言うことは言った。だから、もういい。
「それじゃあ僕はいきますね」
「…………………」
「黙らないでくださいよ」
そう言っても先輩は黙ったまま。小さく肩を揺らしているのが目に入る。どうしようもなく抱きしめたいと思った僕を、消さないと。気づかれないように笑顔をつくった僕の顔を先輩は見ていない。好都合だけど、どうせだったら先輩の顔が見たかったかな。今度こそ背を向けて屋上を出ようとすると先輩に名前を呼ばれた。それを無視して行こうと思ったけど、ただ、最後だからと意味もない言葉を渡す。
「もしも先輩が、今からいうことの答えを持ったら」
「また、ここで会いましょう」
これはさよならの代わり。
海の終わりを知っているか
(答えなんて)
(あるわけないのに)
素敵企画うそつき、様提出
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