今日も雨か。窓から吹き込んできてしまったら大変だから閉めよう。昨日は気付くのに遅れてしまったけれど今日は間に合ってよかった。




彼女が何かいいたげだということを察してしまった俺はいつも以上に舌がまわっていた。
何をそんな早口に。
どうしたというのですか。
紗夜ならば真意には気付かず誤摩化されてくれると思っていた。俺が察したものなんてただの杞憂だと思わせてくれると。しかし、突拍子もなく紗夜は放った。


「私はあの人のことが好きなのかもしれません」


ああ、そうかい。
最近よく一緒にいたようだしね。
きっと彼も好きなんじゃないか、紗夜。

いえるはずなかった。



「傍にいてほしいと思ってしまったのです」



その言葉は俺だけのものだったはずだろう。もう、かわってしまったのかい。では俺は必要ないかな。
頭に浮かぶ言葉が一つも発せられない。何を恐れているというのか。


それは消えてしまうこと。
紗夜の中から、俺が。



110917
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