「―――っもちぃ!」



水を吸って重くなった髪を振り上げて周りに水滴を飛ばす。周りだけでなく自分にもかかって、その+αが一番気持ちいい。ついでに顔も洗ったらもっとよかった。服も脱いでしまえたらもっともっといい感じなのに。隣の蛇口で同じく頭に水を浴びている鬼さんがいなけりゃなぁ。ちらりと濡れた髪の隙間から見ると同じく髪を振り上げていた。近いから水滴がまた飛んでくる。気持ちいい。やっぱ犬飼も来りゃあよかったのに。犬飼も来いよって誘ったら断られた。来なかったあいつ負け組ー、なんてしょうもないこと考えていると部長はもうタオルを持って道場に戻ろうとしていた。



「え、部長もう戻んの」
「目的は果たしたからな」
「もうちっと涼もうぜー。休憩まだ終わんないだろ?」
「お前だけ残ればいいだろう。俺は戻る」



遅れるなよ、と一言だけ置いて部長は戻っていった。ちぇ。



「部長待てよー!」
「うるさい騒ぐな」
「へいへーい、っと」
「―――っ!」



追った背中を越す。
ついでに肩を叩いてやると眉間の皺が面白いことになった。へへん。俺のこと置いていこうとする部長が悪いんだからな!そんな意味を込めて叩いた肩がわなわな震え出したのに気付いたのはけっこう、すぐ。



「…白鳥……」
「んー?ってうわあああああああああああごめんごめんほんとまじごめんごめんなさいって!!」




面白い、なんていってる場合じゃなかったよ俺の馬鹿!結局せっかく水浴びをしたのに休憩が終わるころには休憩前と同じくらいあつくなっていた。俺も、部長も。


110812
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