鼓膜が痛くなるくらいの音を出したのは俺の手元にあったはずのもの。今はその断片が残っている。おかしい。キーンと鳴っている耳もこの結果も。こうなる予定なんかなかったのに。腕を組んで考えてみてもやっぱり爆発してしまう要因はなかったはずだ。 「翼くん大丈夫……?!」 唸っているとカチャリという音を立ててドアが開いた。隣で仕事をしていた月子にも爆発音が聞こえたのか心配をしてくれたみたいだ。あれだけ耳が痛くなったのだから聞こえて当たり前か。ぬははと笑ってごまかそうと思ったけどそれは遮られて、眉を下げた困った顔で手を取られた。火傷してるじゃないとそこではじめて怪我をしたことを知る。いわれてみればたしかにヒリヒリしたかもしれない。気がつかなかった。 大丈夫大丈夫。 じっと見つめてくる月子の視線から隠すために手を頭の後ろに持っていく。動かした時の空気の動きがしみた。だけどきっと月子に余計な心配をさせてしまうほうが心にしみる。 「これくらいは火傷のうちに入らないから大丈夫だ。ほら、月子は仕事に戻んないとだぞ」 「ねぇ翼くん」 「ぬー?」 「怒るよ?」 「ぬ、怒ったらかわいい顔が台なしになるぞー」 あ、やっぱりごまかせない。むっとした顔が目の前にある。たまに出る鋭い月子。これで口笛を吹いたらもっと怒るだろうか。 まぁ見せてときつめに言われてしまったからみせないわけにはいかない。しぶしぶ手を前に出すと怒った顔から困った顔へと変わった。 赤くなっているところを指でなでる。くすぐったいような痛いような感覚に笑ってしまった。 「痛いでしょう…?」 「そんなに痛くないよ」 「冷やさないと。わたし氷貰ってくるね。少し待ってて」 「んー、氷よりも効くものがあるぞ」 何?と聞かれたらなんか楽しくなって俺は満面の笑みで教えてあげる。「いたいのいたいのとんでゆけ!」って。そしたら君は悲しい顔から呆れたみたいな困った顔で「しょうがないなぁ」ってやってくれる。ありがとうっていえば困った顔を笑顔にしてくれる。 きっと、そう。 フリリク/はなこ様 110726 |