約束の時間は20分前。


"4時に校門の前に来てくれない?"


夜勤明けに携帯を確認するとたった一文、それだけの内容のメールを受信していた。これが都からのものだったなら俺は今ここにいないだろう。ゆきだから、言われた通り10分前から待っている。なのに。未だ彼女が現れないのは、何故だ。
理由を想像していると何か危険が、というところまで考えてしまうが今やそんなことは杞憂で。まして学校にいればそれ以外の何ものでもない。

じゃあどうして。組んでいた手をほどき指を頭に添える。
ゆきは意味もなくあんなメールをするような人じゃない。きっと、確かに何らかの用があったのだろう。きっと、ただHRが長引いているだけだ。心配する必要なんかない。言い聞かせる言葉はとても陳腐だ。



「瞬兄っ」



ほら、やはり。寄りかかっていた門から離れゆきの方へ体を正す。お疲れ様ですと言おうとして振り返るとそこには予想すらしていなかった状況だった。これはどういうことだ。
ゆきの隣に同級生であろう男子がいた。それだけなら驚くことなどしないがその男子の手がゆきの肩に置かれていた。払いのけてしまいたい衝動にかられたが俺が動く前に男子自ら手をどかした。動いてしまいそうだった右手を押さえておいてよかった。



「じゃあな蓮水!」
「う、うん。ありがとうね」



俺が止まっている間に二人は仲良さそうに別れの言葉を交わしていた。心なしかゆきの顔に赤みがかかっているようにも見える。それは男子のせいなのか。考えたくもないことが浮かぶ。



「瞬兄ごめんね、待たせちゃって」
「別にあれくらい大丈夫です。それよりも今日はどうしたのですか」
「え?あぁ……えっと………少し熱っぽくって、」



そのゆきの説明によると、昼休みに入ってから段々具合が悪くなったそうだ。それで俺にメールを送ってきたらしい。さっきの男子は熱でふらついてしまうゆきを見かけて校門まで送ってくれたそうだ。最初は大丈夫だと断ったがどうも引いてくれず校門まで、ということで承諾した、と。
ゆきは優しさと捉えたようだが俺には肩を抱く意図に下心が見えてしまう。こんなことなら校舎内に入ってしまえばよかった。そうすればあの男子がゆきに触れずに済んだというのに。



「熱があるなら早く帰りましょう。荷物、持ちます」
「ありがとう。ほんとに来てくれると思わなかったから嬉しい」



そういえば返信をするのを忘れていた。すみませんと謝るが笑って返された。来てくれたからいいよと。ゆきの表情に返信をしなかった後悔とさっきの男子への不快な感情が穏やかになる。



「ねぇ瞬兄?」
「なんですか」
「手、握ってもいいかな」



返事はせずに空いている手を差し出す。俺の手にゆっくりと自分の手を重ねてくれた。
触れたゆきの手は少し熱い。家に着いたら安静にさせないと。それと今は出来ないが抱きしめてやらないといけない。ゆきは気にしてもいないだろうがそれだけじゃ俺の気が済まないから。うんと、抱きしめる。


フリリク/名無し様
110427
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -