窓の外を眺める。天気予報が言っていた午前は疾うに過ぎたというのに未だに雨は降っていた。

雨のち晴れ、午後には青空が広がるでしょう。
なんて、空に広がっているのは雨雲だ。ガラスには風によって付いた水滴がところどころで流れていて途切れた道を作っている。
まだ梅雨入り前のはずなのに一昨日昨日と雨が続くのはあまり喜べなかった。ましてその間中に自分の誕生日があると、余計に。



「探しましたよ部長っ」



下校時刻を過ぎた今、僕以外に残っている誰かはごく少数だと思っていた。ましてその中に彼女がいたことは予想外だ。いや、忙しい彼女のことだから部活がない今日でも他の用事で残っていたのかな。とにもかくにも今日彼女に会えたことは何事も及ばない幸福なことだ。まして僕に会いに来てくれただなんて。

どうしたのかな?
平然を装ってみても自然と頬が緩む。机の上に置いていた腰をあげ、彼女がいる戸の近くへ寄ろうとする。すると彼女は慌てたように片手を前に差出し、待ったのポーズをした。その行動にクエスチョンマークが浮かんだが従う。窓際の机に座っていたから少し距離があるがこれでいいのだろうか。



「部長、お願いがあるんですけど………いいですか?」
「君からのお願い?もちろんいいよ。言ってみてくれるかな」
「そしたら少し目を瞑ってくれませんか?」



あ、と気づいてしまった。彼女は僕の誕生日を知っているのかもしれない。それが今日だと。
そういう訳ではないとしても彼女が来てくれた、それで十分だ。だから、いいよ。一言告げて目を閉じた。
ガタッと離れたところで音がする。すぐに彼女が近づいてきた気配を感じて胸が高鳴った。



「誕生日、おめでとうございます!」



見事に僕の予想は的中して、大きな花束を握らされていた。花束の中にはカードがささってあって、祝いの言葉と"From 星月学園弓道部員一同"という文字が記されていた。こんな雨が続く中、街まで買いに行ってくれたのかな。こんな、大きな花束を。
嬉しさが溢れるのを堪えて感謝の言葉を伝える。堪える度にとめどなく零れるそれがとてもいとおしかった。

誕生日記念
110513

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