羊くんはいつも私に会いたいって言う。だけど、私も会いたいって言うと笑って誤魔化そうとする。声が聞けるだけで僕は嬉しいよって。さっきと言ってること、違うよ。気づいてるのかな。わざとかな。聞きたいけどそれに触れてほしくないと言ってるみたいにその後すぐ電話を切る羊くん。もしかしたら、ほんとに会いたいと思っているのは、わたしだけ?
僕が会いたいと言うと君も同じように会いたいと言う。その言葉は嬉しいはずなのに、苦しい。そう思わせてしまう自分が嫌だ。どうすることも出来ない自分が嫌だ。ただ笑うことしか出来なくて、声が聞けるだけでなんてそんなんじゃ足りないのに嘘をついて。それに君が傷ついているのも知っている。知ってるからこれ以上傷つけたくなくて電話を切るんだ。このまま、この状態が続いたらいつか君にフラれちゃうかな。それだけは嫌なのに、なにもできないぼく。
何度も続くそれに私はついに泣いてしまった。ダメ。こんなんじゃダメ。ダメ、なのに。ほんとはもうわたしのことすきじゃないんだって。肯定されたらそれで全部終わりなのに何を聞いてるんだろう。だけど電話の向こうから羊くんの声が聞こえてこなくて。またわたしはないた。
ついに君に言われてしまった。きっと今否定しても遅いんだろうな。そんなことないよ。大好きだよ。そう言ってそれを信じてもらうために、何も出来ないんだから。ただ聞こえてくる涙の音を聞いているだけ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だって心の中で唱えても聞こえてるはずないんだから。それをくちにできないぼくはなんておくびょうものなんだろう。
最後に聞こえたのはさよならの言葉。その後ろに好きだよって言葉が小さく囁かれたのを、ぼくらはきづけなかった。
親愛なる梅子へ
101121