急に降ってきた雨に、今朝傘を持ってこなかったことを後悔する。今日はたまたまニュースを聞かずに家を出たのがいけなかったのか。今となってはもう遅いが悔いる気持ちはなくならない。
「宮地くん?」
最初は弱かった雨足もだんだん強くなっていた。だがここで止むのを待っていても無駄に思えてきて、走って帰ろうとした時、後ろから話しかけられた。それが誰だなんて、すぐわかった。
「宮地くんも傘ないの?」
「あぁ。夜久もないのか?」
「うん」
振り向いた先にいた夜久は傘を持っていなかった。俺と同じように鞄を持っているだけ。こいつなら持っているかもと少ししてしまった期待は見事に消えた。期待をするのはおかしいのかもしれないが、もしかしたら、と思ってしまうのはしょうがないと思う。実際そんな言い訳は無意味で、夜久と俺、二人して空を仰いだ。雨はまだ止みそうにもない。しばらく黙っていると夜久が「天気予報では一日中晴れだったのにね」とふいに言ってきて。なんとなく見ていないとは言いたくなくて、そうだなと頷いた。
「雨、止むかな」
「どうだろうな」
会話はそこで終わった。お互い顔を見ないで話すというのも、案外いいかもしれない。さっきまでの走って帰ろうとしていた思考は消え、もう少し続けと思ってしまえるほどに。この時間が続いてほしかった。
錫七企画/想叶様リク
101004