まだ始まってもいないというのに校舎はいろいろな声で彩られていた。
主色は黄色。それに混じって赤桃白黒茶。何もそんな大きな声を出さなくてもと言いたいくらいの音量で溢れている色たちの合間をくぐりながらも、目的地を見失うことだけは避けるべく前だけ見つめていた。私に投げかけられたものも中にはあったかもしれないがそのままながす。ごめんなさい。と感じることもなく。
うるさいとすら思っていた。

 どうして私が騒々しい場所をあるかなければいけないかというと、約束があったから。約束と表現をしたものの、一方的なものを約束と呼ぶことには少々気が引ける。あれが約束になってしまったら日常の中で約束が溢れかえってしまう。“九時前に放送室に来てもらっていいかな?待っているから”
一言、二言を告げられ小さくなっていく背中を眺めて反論も拒絶もできないのはいつものことで。受け入れるしかないと理解しているから約束と言えてしまうのかな。一応先輩の言葉ではあるのだし。後輩である私は従うのが常だ。
 人混みを抜け“立ち入り禁止”の紙が貼ってある紐をくぐり放送室を目指す。普段ならわざわざ決まりを破ることはしないが副会長直々のお約束なのだから話が通ってると判断。周りに誰もいないし気づかれないだろうと思ったのは内緒。目的地までは先にある角を曲がればすぐのところに迫っていた。初めて来たからそう思ってしまうのかもしれないが遠すぎるのではないだろうか。職員室の隣でもなく生徒会室の隣でもなく、最上階のはずれなんて。私じゃなくても訪れたことがない人はいるだろう。場所が場所だが、こんなところに呼び出す人も呼び出す人だ。着いたらまず理由を聞く。そのあとに文句を言う。本来ならば準備までが私の仕事で準備が終わった時点で帰宅してもなんら問題はなかった。それを阻止されたのだから相応の理由がなくては府に落ちない。
 最後の角を曲がって、見えた放送室のプレート。腕時計を見ると約束の時間数分前。間に合わなかったら文句は言えないと思っていたから間に合ってよかった。
 一歩踏み出して扉の前に立つ。防音のはずだからノックをする必要もないだろうが形だけ行う。鉄の冷たさを感じ、そして響く金属音。もちろん応えもなく。ドアノブに手をかけた。
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