ひどいやひどいやとぶつくさ言いながら背中を向けている好春を見て申し訳ない気持ちといじってあげたい欲求が生まれる。後者の方が強いとかそんなことはありません。 好春は壁と向き合ってるから見えていないだろうけどちゃんと正座をしていますよ、私。 「ごめんって好春。忘れてたんじゃなくて間に合わなかっただけで覚えてはいたのよ?ほんとに」 「はいはいうそうそ!間に合わなかったならメールで一言だけでも送れたでしょ。それすらしなかったんだから、絶対ちぃ姉は忘れてたんだ」 まぁそれが正解なんですが。ご名答!と言えるはずもなく。 「忘れてないって言ってるでしょ?だから翌日だけどちゃんとこうしてプレゼント持って会いにきたんじゃない」 プレゼントとして用意したのはお揃いのマグカップ。もう一つ買って京にぃともお揃いにしようかなって思ったけど他の色がなかったし、お金もなかった。そして何より京にぃともお揃いだったら好春が怒るような気がしてやめた。 どうしてお揃いのマグカップにしたのかというと、いつだったか好春が僕もお揃いのものが欲しい!と言っていたせい。たしか京にぃにお揃いでストラップを買ってもらった時だったか。私が京にぃにねだったのと同じように好春にもねだられちゃったんだよなぁ。 だからプレゼントを決めるときしぶしぶお揃いに決定したのだった。考えずに済んだので楽だったのは内緒。私の趣味に走ったし好春の大好きなお花のイラストがふんだんに使われているわけでもないから好春がかわいいと言ってくれる自信はないけど、喜んではくれる。そう思って朝一で買ってきましたよ、えぇ。 「それは、嬉しいんだよ。でもやっぱり一日ずれておめでとうっていわれても素直に喜べないんだもん…」 「うん。私のせいだってのはわかってるわよ。だから、ごめんね好春」 余計なことは言わない。今でも十分悲しませてるんだから、これ以上主役だった人を悲しませるのは、ねぇ? 「……来年はちゃんと祝ってよ」 やっとこっちを見てくれたと思ったら、涙目プラス上目使いのコンボを発揮してくれて私の良心ゲージはかなりのダメージを食らっている。ちょっとかわいいけど。 私だって良心が痛む程度にはちゃんと申し訳ない気持ちがあるんだから、この罪悪感を消すためにはやく包装された箱を開けてそのしかめっつらを笑顔に変えてよね、好春。 120710 |