年に一度の誕生日だってのに、そんなことも知らないであろうあいつは以前と変わらず面倒事をまたやらかしていたようだ。俺がいなくなった今(いや、いてもか?)あいつを本当の意味で止められるのは颯斗だけだと思うんだが、現生徒会長の颯斗は仕事から手が離せないらしくたまたま休みだった俺がたまたま来ていた星月学園内で、たまたま颯斗の代わりにあいつを探していた月子に会い、たまたま月子に急用事ができ、たまたま目の前にいた俺が代わりにこうしてあいつ……翼を探している、なんて。どうやら翼は俺がいなくなってからもほぼ毎日探されるようなことを繰り返しているらしい。進歩ねぇなあいつ。って、進歩したからこんだけ探しても見つかんねぇのか。いやいや、これじゃ進歩じゃなくて退化だろーが。せめて一歩でいいから進めっての。


ちらっと壁にかかっている時計をみると月子から嫌なバトンをもらってから1時間経とうとしているじゃねぇか。いくら暇だからといってわざわざ今日翼探しにそんなに時間を掛けたくはない。ないんだけど。これで探せなかったら俺が颯斗のお仕置きを食らうはめになりそうだからやめることはできない。なんという災難だ。



「あー……」



考えれば考えるほどやる気がなくなってきて動かしていた足を止めた。卒業する前はこんなこと日常茶飯事だったのになー。一ヶ月も経っちゃいねぇのに、そんな出来事はかなり前のことのように思える。なんてそんなことを思っていると、なーんか見たことがあるような髪型のやつがいた。あー、たしか翼のいとこだっけか?



「なぁ」



まぁ違ってもいいか。翼見かけなかったか聞いて、見なかったといったら即さよならだ。少し離れた場所にいたそいつのとこに足を動かせる。ちょっと休んだだけなのにそれが余計に足を重く感じさせていた。



「……え?あぁ、誰かと思ったら不知火先輩ですか」
「ん?お前俺のこと知ってんのか?」
「えぇまぁ有名ですから。ところで何か用ですか………ってきっと翼のことですよね」



おっと。何やら翼の居場所を知っている感じだ。ってことはこれでやっと翼探しは終わる、のか?あー声かけといてよかったぜ。もうこれ以上走りたかねぇ。



「そうなんだよ。知ってんなら教えてくれ」
「あー、残念ながらまだダメです」
「は?」



が。知っている風なのに残念ながら?まだ?なんだそりゃ。知ってんなら教えてくれ。頼むから。



「あー、でも、そうですね。あと3分したら屋上にいってください」
「3………?」
「細かいことは気にしないでください」



いいですか?3分ですよ。と再度言う。えーっと、3分後だと…………5時、か。5時にいったい何があるってんだ?というよりここから屋上までって3分なんかでいけるわけないだろ。全力で走ったって厳しいぞ、おい。



「まぁまぁあまり考えないでください」
「はぁ?」
「あ、ほらもう向かわないと間に合いませんよ?」



ほら、と背中を押された。いけってことかよ。やっぱ翼のいとこだけあってこいつもなかなか強引なのかよ。すっげぇにやって擬音が似合いそうな笑顔で俺のことをみている。なんだかよくわかんねぇけどとりあえずいってみるか。



「あー、一応礼はいうぜ、ありがとな」
「いえいえお気になさらず」


ほんとに一応礼をいって屋上に向かって走り出した。きっと5時は過ぎるな絶対。これで誰もいませんでしたとかだったら翼のやつぶん殴ってやる。



「不知火先輩、」



誰かに呼ばれ足を止めると近くには誰もいない。ということは俺を呼んだのは翼のいとこかよ。まだ何かあんのか?と振り返れば、


「誕生日おめでとうございます!」



とか言われて。なんでお前が知ってんだとまた頭に疑問符が浮かんだがとりあえず片手を上げて、すぐ走り出した。




後々名前を翼に聞いて知ったそいつ、木ノ瀬がそういった訳を知ったのは屋上に着いてからだった。





仕組まれたかくれんぼ
(屋上の扉を開けると)
(クラッカー音が迎えてくれた)




ハッピーバースデーぬいぬい!←遅い
カマ子さんのみお持ち帰り可!

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