寝室に入ると、君が寝ていた。寝ないで待っててと言った覚えがないから当たり前なんだけど。寝る前に少し話せるかもしれないと思っていたから、少し残念だ。こんなことならあんなにゆっくり湯船に浸かってくるんじゃなかったなぁ。俺のばか。
足音を立てないように静かに近づくと月子が寝息を立てていた。1人で眠るには大きいベッドの左側で丸くなりながら。ちゃんと俺の場所を空けといてくれてるんだなと思うと、頬がゆるむ。俺もすぐに布団に入って寝ようと思ったけど、なんだか目が覚めたから月子の隣に腰をかけた。少しななめを向けば、月子の顔が髪の毛に覆われてしまっているのが見える。顔にかかっている髪を人差し指でよけてやれば気持ちよさそうな寝顔。そのまま髪を撫でてやれば、もっと、気持ちよさそう。

「つーきこ」

話しかけたって君は寝たまま。調子に何度も呼ぶと、君は笑った。
君を起こそうと思ったんじゃない。ただ呼びたくなっただけ。呼べる幸せを、噛み締めたかっただけ。そう。俺って幸せなんだよ、いつも。月子は知らないよな。けど、知らなくっていいよ。たまに触れられる今みたいな時間を過ごせればいいから。君は、君のために俺がつくる幸せだけ、知っていて。





ほんとはね、知ってるよ
(けど、言わないの)

100712



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