夏、夏、夏。もう目の前に、夏。夏に生まれたからって訳じゃないけど、夏が好きだ。そういえばだいたい"好きそう"と返される。それが嬉しく思えるくらい、好きだ。そして尚且つ、夏の入口の今日が、特に好きだ。


「直ちゃんサッカーやろうぜ!」
「おうっ、これ終わったら行くから先やっててくれ!」
「了解!早くきてくれよー!」
「待ってっから!」


わーわーとはしゃぎながら教室から出ていく生徒。そいつらからほぼ毎日誘われる放課後。一応教師だから誘われる度に付き合う、なんてことはできないんだけど。それでも誘ってくれるあいつらとやる遊びは格別楽しい。今日はサッカーか、と思いながらまだ少し残っている仕事をやる。急いで、早くあいつらのところに行きたい。ぐわあっとはしゃぎたい。本来なら学生時代に感じるそんな衝動を最近初めて知った。だからかその衝動も、生徒たちもすごくいとしい。あー、俺は幸せもんだ。


「楽しそうですね、陽日先生」


あと一行、というところで話しかけてきたのはきっと夜久。手は止められないから確認出来ないけど、声でわかる。夜久はくすくす笑いながらカタッと俺の座ってる席の前の椅子に座った。ちらりとそっちの方をみると目が合った。やっぱり夜久だ。ほんとにあと少しで終わるんだけど、見られてると思うときちんと頭が回ってくれない。楽しそう、と言われたのだからきっと俺は笑いながらやっていたのだろう。うぅ、見られてたと思うと恥ずかしいぞ。


「この後サッカーやっから、楽しみでさ。てか、いたなら声かけてくれよ」
「ふふっ、ついつい見ちゃってました」
「ついついって、」
「最近陽日先生はいつにも増して元気ですよね」


見てて楽しいですと言われる。いやいや、見られてるのは恥ずかしいですよ。しかも夜久にって。あんま見ないでくれよと言えば嫌ですと笑って言われてしまった。なんだってそんな。いや、夜久が楽しいんなら、よくないけど、いっか。


「そういえば今日は陽日先生の日ですよね、7月4日」
「お!よく気づいたなぁ。そうなんだよ、俺の第二の誕生日!」
「ふふっ、それじゃあ、おめでとうございます」


ありがとうといえば、丁度仕事も終わって。急いで片付けを始める。そんな俺を見て夜久はサッカーがんばってくださいと言って帰ってしまった。一緒にやろうとは言えないけど、なんか淋しいなこれ。どうせなら途中まで一緒に行きたいと思う。べつに夜久だからとか深い意味はないんだけど。今ならまだ、追いつくだろうか。すごく、追いかけたい。そう思ったら体が動いてて。危うくやった仕事を忘れそうになったりしながらも教室を出る。走り出せば階段のところに夜久がいた。なんて、声をかけようか。サッカー見ていかないか?途中まで一緒に行こう?…………どっちでも、いいか。とりあえず、「夜久」と呼んでしまおう。なんてったって今日は俺の日だ。今日の俺は、なんでもできる。はず!





7月4日
(夏の入口)

100704



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