「今日郁に会えたんです」


夢の中で、と彼女は少し寂しそうにいった。ちょっと前なら、それなら出演料をもらおうかとかからかうこともできたけど今はもうそんなことはできない。僕も、同じだから。


「僕も君に会えたよ」


だけど、いうつもりはなかったんだけどな。それなのに僕の口は勝手にしゃべっていて、そんな自分を電話越しの君に気づかれないように小さく笑った。でもね今日の夢は決して幸せなものじゃなかったんだ。どんなだったかは教えてあげない。君を傷つけてしまうと思うから、教えられない。そんなことを知らない君は嬉しいですといって声が明るくなっていた。ほら、そんな君にはいえないに決まってるでしょ?


「明日も会えるといいな」
「そう、だね。会えるよきっと」
「ふふっ、うん!」


だから、さ。夢魔とかいうやつ。明日もちゃんと月子に会わせてよ。それで今日とは違って彼女に話したくなるくらいの幸せな夢を見せて。今日はあんな夢をみせたんだから明日こそは絶対、だよ。

しばらく他愛もない話をしていると時計の針が頂上で重なりそうになってしまったからそれじゃあ寝ようかといえばまた君は寂しそうに頷いた。だけどすぐに声を明らめていったんだ。





夢の入口で待ってます

郁誕企画そのさん
100604



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