ざわざわと耳障りな音だけが響く街中。あまり自分から好き好んでいこうとは思わない、というより嫌いな場所なんだけど、今日はそんなのはどうでもいい。はやく、来ないかな。


今日は久しぶりのデート。お互い忙しくて最近は電話やメールでしか月子と繋がっていることができなかったんだけど、ようやく休みが重なって会える日がきた。それが今日。久しぶりのデートで久しぶりの待ち合わせ。まだ約束の時間にもなっていないけれどこの場所についてから何度も思ったよ。君が僕の前に立って笑っている姿を。だからはやく来て。きっと君が来たらこの溢れかえる音たちも一瞬で無音になると思うからさ。今は今日会う君に免じて我慢しといてあげる。

でも遅れたら、お仕置きだからね。





君待ち刻

郁誕企画そのに
100603



BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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