目の前がちかちかと明るくなっては暗くなり続けている。そのせいで視界は歪んで何も見えなくなる。たった一つを除いて。まぁそれがこの現象の原因だからなんだと思うんだけど。それなのにどうにも俺の頭は都合よく出来ている。どうしたもんかと空を眺めてみても視界はかわらずちかちかちかちか。あー、段々慣れてきた。
「陽日先生」
そんな時に唐突に呼ばれて。びびったわけでなく。決してびびったわけじゃなく。いきなりだったから驚いて座っていたベンチからずり落ちそうになった。すんでのところで落ちはしなかったけどな!
「うぉ、夜久か。どうしたー?」
「陽日先生いるかなーってきてみたんです」
阿呆だと言われてもかまわない。今度こそ落ちた。いや、だって、なぁ。そんなこといわれると思わないじゃないか。おかげで視界はちかちか頭はくらくらだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「おおおおう!!大丈夫だからお前ははやく寮に帰れよー?もうすぐ夕飯だぞっ」
バレないように、バレないように。俺が今おかしくなってることが夜久に知られないように。立ち上がりながらそういつもどおりを装っていってみたがダメダメだったようだ。夜久が笑ってる。それが俺がベンチから落ちたからなのか、変にわざとらしく装っているからなのかはわからないが。
「………わかりました。それじゃあ、また明日、です」
「おう、また明日な!」
「はいっ」
たったと軽い足音を立てて夜久は帰っていった。そこで一息吐く。よかった、深く突っ込まれなくて。突っ込まれたら危うかったぞ。はぁ、ともう一つため息をついてからベンチには座らずフェンスの方へいく。ガシャンと掴んでまた空を見上げた。相変わらず俺の目はちかちかしていて夜空を見せてくれない。やっぱり見えたのは夜久だけ、か。さっきいったように今の俺はもう夜久以外何もみえない。そう、俺は夜久を好きになってしまったのだ。例え伝えることはできなくってもこの想いは確かに愛だから。でも今、教師の俺はそんなことは許されない。許されないから、このまま俺は変わらずに生きていかなきゃいけないんだよなぁ。なかなか大変だ。ちかちかのくらくらでこれからも夜久と接するなんて。
いつか、本当に、堕落しそうだ。
ゆるやかに堕落
(すでにもう)
(堕落中)
素敵企画"秋薫る、くすぶる恋"様提出
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