幸せだと、叫びたい。
きゅーっと縮こまった心臓も上がったまま下がらない頬も動かさずにはいられない両手も。どうしようもできないほどの気持ち感じたことなかったんだ。だって、だって。現実が夢の中のよう。君が、俺を、好きだなんて。そんなの冗談でも冗談じゃなくっても幸せになるだろ。犬飼にバカにされたって犬飼に憐れみの目でみられたって犬飼に笑われたって。今はそんなの屁でもない。周りも見えないくらいの幸せ。こんな日がくるなんて思ってもいなかった。願っては……いたんだけど。それが今さっき叶ったんだ。今も目の前にいる夜久が叶えてくれた。意を決していった言葉はもう思い出せないんだけど、君が太陽みたいな笑顔でいってくれた言葉は胸に刻みこんだよ。


「夜久、」
「は、はいっ」
「ありがとう」


刻んで刻んで、刻む。今この瞬間の幸せを一生の宝物にしてやる。

どうしてありがとうなの?と不思議そうに俺を見上げる夜久に思わず顔をそらしそうになったけど、そこはぐっとこらえて宝物をくれたからだよといってやる。宝物なんていったらなんのことかわからないかな。言葉と幸せ。いや、きっと夜久なら気づいてる。だから私も宝物もらっちゃった!なんて笑ってるんだろ?そう思うと一気に恥ずかしくなってきた。俺、なんていったんだっけ。あぁ、えーっと、んー?


頭抱えてんーんー唸っている俺に君はいった。









(どうやら君は)
(俺を蒸発させたいらしい)


100525



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「見えない臓器の名前は」
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