初めて君と出かけた日のことを今も僕はよく思い出すよ。君は憶えていてくれてるかな?あの日はそう朝から空に雲がいて2人して「残念だね」って言ってたよね。ほんと、今でもそう思うよ。あの時朝から晴れていたなら、きっと君にあと少し良い思い出として贈れたかもしれないから。っていってもあれはあれでよかったと思うのもほんとなんだ。


2人とも"デート"と呼べるようなことをしたことがなくて、僕も今みたいに手を引いてあげれなかった。まぁ君に気づかれないようにはしていたけどね。ふふ、気づかなかった?そっか、よかった。気づかれていたらちょっと恥ずかしかったよ。

最初に校門で待ち合わせして、街まで行って。通りのお店に入っては出て。そういえば手は最初から繋いでいたね、なんでだっけ?…………ははっ、ごめんごめん。憶えてるよ。僕が「恋人なんだから手を繋がないと」っていったから。忘れるわけないでしょ、ね?そしてたまたま見つけた良い雰囲気の喫茶店にはいって部活のみんなのこととか、合宿のこととか………ってよく考えたら部活の話ばかり話してたね。それで2人して話に夢中になっちゃって気がついたら結構時間が経っててあわてて来た道を戻った。けど途中で休憩っていって公園に入って。入った瞬間にベンチにへたりこんだから2人で笑ったよね。その時やっといつもみたいに笑ってくれたからほっとしたんだ。あ、君もそうだったの?なんだかんだいって君も僕も緊張していたからね。ふふ、けど、そっか。嬉しいな。

公園のベンチでは、何も話さなかったね。けど、手は繋いでいた。すごく心地よかったんだそんな時間が。だけど少しの休憩のはずが気づいたら周りは暗くなってて、どうしようって思った。学校のことはもちろんだけど、君はどう思ったかなって。つまんなかったんじゃないかと思っ……………ごめん、ほら、その時は僕も子どもだったから。ごめんね、君はそんなこと思ったりしない。知ってるけど、知ってるからこそその時は混乱しちゃって思っちゃったんだ。許して、くれないかな?………うん、ありがとう。ふふ、話にもどるね。
まぁそんなことを思っちゃったから急に僕は立ち上がっちゃったんだ。君はとても驚いた顔をして僕を見上げていたね。可愛かった。でもすぐに僕から視線を外して、空を見つめ出した。そしてすぐに「月が、」って笑った。それまで空を覆っていた雲が途切れてその間から月が顔を出していて。その月が、月を見上げる君が、忘れられない。


すごく、綺麗だった。



あれ、どうしたのかな?顔が赤いよ。…………照れてるのかな?月子さんはほんとに可愛いね。あの頃からかわらない。あの後は急いで学校まで帰って終わりっていうちょっと笑える思い出にもなってしまったけれど。それでもやっぱり、良い思い出だよ。あの頃から、今まで。そしてきっと未来でも。

そういえばあの後寮の部屋に戻って、僕なりに未来を想像してみたんだ。どんなだったか、気になるかな?あ、でもそんなすごいことは想像してないよ。だって想像した未来はそのまんま今なんだ。驚いたかな?あの頃僕は"いつかまたどこかの公園のベンチに2人で手を繋ぎながら座って、夜空を見上げてる"といいなって思ったんだ。意外………だった?けど、実際そうなってる。なんてことない未来を想像したんだ。君とならこういう未来を過ごしていきたかったから。
そしてその後にもっと先の未来を占ってみたんだ。残念だけどそれは教えてあげない。どうしてって……………そうだね、どうしてだろう。ちょっと悔しいから、かな。でもすごく幸せな未来だった。きっとその通りになる。だからもう少し経てば、君も知ることができるよ。ちょっとの辛抱だから、ね。

その時を楽しみにしてて。





少しだけ覗いた未来の向こう
(君のウェディングドレス姿を)
(みんなに見られるのが)
(悔しくて、ね)


素敵企画"ダイヤモンドの心臓"様提出
100509



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