好き、ってなんなんだろう。

犬飼や小熊に対する"好き"
宮地に対する"好き"
部長に対する"好き"
そして、夜久に対する"好き"


全部なんとなく違うように思えてならない。なのに"好き"という言葉はとても曖昧なものだからそういうしかない。それなら使わなきゃいいって誰かはいうかもしれないけど、それはやっぱりなんか違って。でもなぁなんてだらだら俺の疑問は続いていく。まぁ続いていくだけで答えなんかはでないわけなんだけど、考えずにいられないのは俺にとって重要なことだから。もしも俺の持つ"好き"という言葉の意味が全部いっしょだったなら、えーっと、そのぉ………………お、俺があいつをどう思っているのか、わからなくなってしまうんだ。

なぜだか最近は夜久が気になってしょうがない俺。前からよく話してたし、何度も一緒に部活をして一緒に帰った。それなのに今あいつのそばにいくと、すごく胸が痛くなる。だから、夜久への"好き"はちゃんと恋なのか。自分のことなのにわからなくって、気になって気になってしかたないんだ。



「んんん…………!あーもーわっかんねー!!!」
「んあ?いきなりどうしたんだよ」
「うぉっ!い、犬飼か。おおおおおどかすなよ!」
「おどかすも何も、ただ話しかけただけだろ?」



いつの間にか目の前にいた犬飼はまるで意味わかんねと言いたそうな顔で俺を見ていた。考えているところを見られたのは恥ずかしいけど、もしかしたら犬飼なら俺の疑問についていいアドバイスとかくれっかもしれないとひらめいた。



「なぁなぁ犬飼!」
「んだよ、いきなり目ぇキラキラさせて」
「お前、"好き"の意味ってわかるか?!」



思い立ってすぐに口に出してしまったのだがちょっと(いや、かなり?)質問が唐突だったのかもしれない。犬飼はさっきよりももっと不審な顔になった。でもそんなことは気にしない。というよりする余裕がない。とりあえず俺は犬飼のこたえを待つ。



「はぁ?そんなん俺は知らねーよ」



が。返ってきた言葉は期待していたものと違った。けど当たり前のこたえなんだよなぁこれが。俺があんだけ考えてもこたえは出なかったのだから、今いきなり犬飼に聞いたってこたえが出てくるわけない、よな。


「うっ………………だよなぁ…」



目の前の犬飼なんか気にせず思いっきり落胆する俺。少し申し訳ない気もしなくはないが犬飼なら大丈夫だという変な確信があるから、大丈夫なはずだ。それにしてもやっぱ犬飼もわかんないのかぁ。



「つかいきなりなんなんだよ」
「なんとゆーか………"好き"の違いを知らなきゃならなくなってさー」
「"好き"の違い?あぁ恋愛とそうじゃないやつ、みたいなのか?それならあれだろ」
「あれ?!!あれってなんだよ!!!!」



落胆していた俺に神さまが微笑んでくれたみたいだ。というよりも"好きの意味"じゃなくて"好きの違い"をはじめから聞けばよかったのかよ。少し前の自分ばかだなぁと思いながらも犬飼の言葉を待った。



「"好き"以外で表せないのが恋愛の"好き"だろ」
「好き、以外……………」



ということは?当てはめてみればいいのか?えぇっと、

犬飼と小熊の"好き"は"友情"
宮地の"好き"も"友情"
部長の"好き"は"憧れと尊敬"
そしたら夜久の"好き"は?

部長までは順調にかわりの言葉がみつかったのに夜久のところで止まってしまった。ってことは、俺は夜久のことが好きってことなのだろうか?恋愛として。



「――――――そんで?」
「……へ?…」
「好きな奴でもできたのかよ」



夜久への"好き"がもしかしたら恋愛なのかもしれないとわかって思考停止していたところに犬飼は爆弾を落とした。



「なななななななな…………?!!!」
「お、やっぱあたりかよ」



にやにやと眼鏡の奥にある目を三日月のようにして俺を見てくる犬飼。犬飼のおかげで夜久への気持ちがわかったのはいいんだけど、今この状況はよくない。すごくよくない。でも、どうしようもできない。って、だめじゃん俺……………………



「ガラにもなく何悩んでんのかと思ったら好きな奴のこととはねぇ」
「わ、悪いかよ!」
「悪くなんかねぇって」



ほんとに悪いと思ってないのはわかってるんだけど、ガラにもなく悩んでるってのはひどいだろ、おい。俺だっていろいろ悩みがあるっての!今やっと夜久のことが好きだってわかって更に悩みが増えたってゆーのに。けどまぁそんなことは犬飼に伝わるわけなくって。てか伝わってほしくないんだけど。それでもこたえをくれたことには感謝してる。



「と、とりあえず!ありがとな!」
「気にすんなって。俺は応援してるぜー」
「…………………………ありがとう」
「ま、がんばって夜久に告れよな」
「おう!…………………………………………………………………………………………………………………………………って、え?」


なんで知ってんだよ!と言おうとしたら犬飼はどっかに歩いていっていた。犬飼の口振りからすると俺より前に俺が夜久を好きだと知っていたみたいだった。

恐るべし、犬飼。





悩み多き少年の主張
(だ、誰にもゆーなよ!!?)
(へー、何を?)
(―――――――?!)



素敵企画"六等星"様提出
100508
載せるの忘れてました



「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -