猫より君ですよ。

・名前固定。

・突撃。

・自分家より余所様(ドヤァァ!!)






「書簡を〜、彼方へフライアウェエエイ〜フライアウェエエイ♪」

「出来ると思いですか時継様?」

「冗談です、ごんべ君。後、何でfly awayの意味が解ったの?」

「ごんべ君ではなく八坂です、時継様。後、南蛮の言葉の意味は解りませんがあきらかに書簡持って庭に向かって投げようとする姿を見たら止めますよ」

お早う御座います今日和今晩和、相変わらず養父の半兵衛さんにスパルタな仕事させられてる僕の名前は竹中時継と言います。

今日も安定の仕事の山を見てうっかり現実逃避がてらに、国民人気アニメの主題歌を歌いながら投げようとしたらお付きの八坂君に阻止されてしまいました。

て言うかコレ投げたら冗談抜きに僕の仕事が増えるだけだからやりませんよ、僕はまだ過労死したくないよ八坂君。


「にゃあん」

「……………お?」


どこからか聞こえた猫の鳴き声に身体が勝手に向かいます。

八坂君、違うよ。

僕はちゃんと仕事したいよ、しないと増えるばっかりだもん。

だからちゃんとするから今は猫に会いたいんだよ八坂君。

猫ちゃんの鳴き声は何処からだと部屋から縁側に出て、みっともないけど這う様な形で縁側からズルリと上体だけを垂らして縁の下を覗き見ればお目当ての子が居ました。


「にゃーッ!!」

「おっとごめんね、驚いたか」


垂らした身体を元に戻したら八坂君にすっごい文句言われました。

神童と謳われた貴方がなさる行動ではありませんとか何か背後で聞こえてたけど僕は聞こえないフリをします、聞こえないもーん。

ほら出ておいでと、手を差し出してみると意外にもすんなり出てきたのは白い猫である。

あ、大きさ的にはもう大人と言うか子猫ではないサイズ。

僕の指先を逃げ腰の体勢ながらもスンスンと匂いを嗅いで、チロチロと小さな舌で舐めてくるその仕草に胸がキュンキュンである。


「八坂君、猫って偉大な癒やし効果があるんだね」

「………お茶淹れてきます」

「ありがとう。煮干しもね」


煮干しまで持って来てくれるかどうかは解らないが、八坂君がお茶を淹れに一旦僕の部屋から退室すれば、僕の意識は完全に猫ちゃんの方に集中する。

猫は飼いたいが、仕事中に墨にダイブしてその足で部屋や書簡を踏み荒らされたら僕の命が無いので飼うのは難しい。

この仕事をしなかったら別に飼えない事もないかも知れないが、結局今の僕には猫は飼えないのである。

白猫は僕に慣れたのか、掌に頭をすり寄せてくるのでそれに応える様に撫でてあげると「もっと」と言うようにゴロゴロと喉を鳴らし始めた。


「ちょ、どうしよう…めっちゃ可愛いなちくしょう」

「にゃあ」


猫って何処を撫でるといいんだっけ?あ、顎下?と思いながらそこを撫でてあげると猫は顔を上に逸らして「そうだ!そこを撫でてくれ!」と言わんばかりの姿勢になってくれ…わぁああああッ。


「に、肉球がッ…肉球がッ!!」

「にゃあん」


顎下を撫でてたら猫が前足で僕の手をペシリと可愛く叩くも、僕は初めて感じた肉球の柔らかさに胸ズッキュンです。

何これ、ヤバイ。

超柔らかいんですけど、どういうこと?

え、猫の肉球ってこんなに柔らかいの?

初めて知ったよ僕ってかわぁああ、止めて止めて!!そんな肉球でペシペシしないでッ、たまらんからッ!!


「殺傷能力が半端無いよッ!!」

「にゃあん」

「……………時継様?」

「はっ!?」


猫の肉球に感動して構い倒していたら聞こえた切なげな声。

声のした方を向けば、其処には鍛錬を終えたばかりなのか、珍しく袴姿の三成が其処に立っていた。



…何故かちょっと泣きそうな顔で。



「…ッ、畜生風情が時継様に撫でられるとはッ!!」

「ああ、駄目だよ三成。動物には優しくしなきゃ」

「と、時継様…。しかし」

「それに僕からこの子に近付いたんだ。撫でたのも僕からだから」

「……………、…」


僕が猫を撫でてる姿を見た三成が、猫にいちゃもんを言って今にも襲いそうな勢いで食ってかかるから、それを宥めるも三成は何処か納得してない表情をしながら……いや閉口してる。


「三成?」

「にゃあん」

「………………」


唇を一文字にして、眉間に皺を寄せてまるで泣くのを我慢してる様な顔。

いつの間にか僕の手は猫の顎下を撫でる事を止めていて、撫でられる事が無くなった白猫が僕から離れて行った事に、僕は未だ気が付かずに、三成を見ていた。



「……私より、猫…ですか?」



拗ねたそれに近い言葉。


だけど猫の方がいいなら、それでもいいよ。僕は猫より格下という事なんだね。―――とでも変換されそうな…、否、僕の頭は一瞬にしてそれらに変換された。


「うんや、大丈夫だよ三成。僕は猫より三成の方がずっと大事だから泣きそうな顔しないでこっちおいで三成ぃいいッ!!!!」


八坂君が持って来てくれた煮干しは僕の茶請けになりました。







猫より君ですよ。







(三成、久し振りだねうん、何日振りかな本当に(うわぁい、三成のサラサラヘアだ、久し振りだなぁ))

(三日で御座います時継様(時継様が、時継様が私の髪を手櫛しなさってる…ッ!!))

(会いに行きたくても埋もれる書簡の山から抜け出せなくてごめんね、三成(猫の肉球も堪らないけど、三成のサラサラヘアもいいなぁ))

(い、いいえ、その様な事は…ッ。それに時継様がわざわざご足労なさらなくともこの三成が時継様の部屋を訪れます!!)

(そっか、ありがとうね三成(サラサラヘアいいなぁ、サラサラヘア。僕も三成みたいなサラサラヘアになりたかったなぁ))

(と、時継様…(駄目だ、幸せだ))










(さて、サテ)

(痛ぇえッ!!何だ刑部ッ!!小生お前さんに何もしてないだろ!!)

(われも人の子よ、憂さの三つでも晴らしたいものよ)

(一つって言えよっ!!何で三つなん…痛ぇええッ!!数珠は痛ッ!!痛いっつってんだろッ!!)

(りあ充氏ね)

(何だ“りあ充”ってぇええッ!!)





(゚∀。)!

(((゚∀。)))!!

私はまだ何も返せてないんだがどうすればいい(<●><●>)



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