一
注意
・2013年のBASARA正月ネタ
・石田軍
・名前変換無し
――雪が降るほどの寒さが襲う大阪の大晦日。
珍しく三成と吉継、そして私の仕事が夜中まで立て込まなかったので、吉継の私室で迎えることにした新年。
ゴオォォォン、と厚い雪雲の間から見え始めた星の瞬く夜空に響いた除夜の鐘が新年の訪れを告げ、
「敵襲かおのれ家康ぅぅううっ!!!」
部屋のみならず大阪城に響き渡ったであろうその怒声に、炬燵に潜り込んでいた私と吉継は顔を思いっきり歪めることでその音の大きさを語った。
向かい側では、刹那前までは炬燵に潜り込み珍しく横になって体を休めていたはずの細身の男が飛び起きて刀を構えている。
全ての出来事を家康に何でも結び付けたがる三成である――もはや顔が恐惶仕様なのは言うまでもない。
「――やれ三成よ、あれは除夜の鐘。敵襲でも徳川でもないゆえ、落ち着きやれ」
隣で水晶の代わりに蜜柑を浮かせた吉継がそう冷静に突っ込むと、三成の恐惶が一瞬で解かれた。
「そうか」
「新年早々、三成の恐惶顔を真っ正面から拝むとは思わなかったなー」
どうやってあんな顔するのか分からないけど、あれはもはや人間業じゃない。
人間は顔の周囲に黒いもやを発生させたり目を赤く発光させることは出来ません。
それをこなしてみせる三成は妙なところで器用だが、見ているこちら側の身としては「怖い」の一言に尽きる。
「ヒッ、新年早々良いものを見たというものよ。誠めでたきな」
そう肩を揺らす吉継は明らかに私と違う考えをお持ちのようである。
もっとこう、普通の正月を送ることは出来ないのかな、このメンバーは……
いや、新年を吉継の私室で過ごそうと決めた時点で“それ”を求めることは到底無理難題であり、早々に諦めたほうが良いということは分かってはいたのだが。
――それでも。
「まぁ、改めて……明けましておめでとう。てなわけで今年も残業のお付き合いよろしくお願いします」
「はっ、今年こそあの狸を斬滅してみせます!時継様、どうか奴の首級を献上する許可を、私に……!!」
「三成、会話になっておらぬ。時継よ、我を濃き扱うならば、主も我の手伝いをするのが筋であろ?」
「いやいや、だって吉継の仕事って戦と三成の補佐と悪巧みじゃん。どれも私の管轄外だしね?下手したら死ぬからね?」
「と、とと時継様が、わ、私の仕事の補佐、を……?し、しかし時継様の手を煩わせるわけには――はっ!?だがこれで時継様と過ごす時間が増えるのか……?は、半兵衛様……時継様と時間を共にする許可を、どうか私に……!」
「ヒヒッ、主はそうでも三成はその気よ。これでようやく我も子守りから解放される。やれ嬉しやウレシ」
「本音漏れてんぞ吉継。あと三成、あそこでホンダムに乗ってこっちに手振ってる不審人物捕らえてきて?」
「いぃぃえぇぇやぁぁすぅぅぅうっ!!!!」
……不思議と彼らと過ごしたいと思ってしまうのだから、妙な話である。
end
→後書き&オマケ