ふとした瞬間、考えてしまうんです。
もしも私が木兎さんと同い年だったらって。

日だまりに繋がる


「なー、ピアスって痛くねーの?」
休日、ふらりと木兎さんが私の家にやってきた。どうやら大学の体育館工事で部活がオフになってしまったらしい。お腹すいたーといいながらピンポン攻撃をされたため仕方なくドアを開けた、貴重な模試終わりの睡眠日なんですけども。
「まぁ痛いっていっても最初だけですよ、ただファーストピアスはつけとかないと穴ふさがっちゃいますけど。」
へぇーそんなもんかー、と即席ピラフを頬張りながら木兎さんはいう。


木兎さんとは隣部屋の赤葦さんつながりで知り合った。
今も懐かしい、赤葦さんの部屋の前で彼の帰りを待つ木兎さんに「トイレ貸して!」と泣きつかれたのが最初だったけ。
そうして何かの縁があったのか、彼女彼氏という関係になっていた。
ふと耳に手をのばされ髪を払われる。
‥こそばゆいな。

「左耳だけ空けてるの何でだ?」
「両耳だと学校でばれちゃうんで。」
そっかみょうじ高校生だもんな!とにかッと笑う木兎さんに私は少し泣きたくなる。

木兎さんは裏表のない人だから他意はないと分かるが、「高校生」という言葉は私の心をえぐった。ぐしゃりと。
きっと貴方は知らないんだろうな。
バレーなんてテレビで見るだけで出来ないし私は所詮ただの女子高校生で幼過ぎて。
大学には私より美女で素敵で木兎さんに釣り合う人がたくさんいるだろう。
それに比べ私は。

少しでも木兎さんに近づきたくてピアスホールを開けた。

化粧も練習した。

バレーの試合もみるようになった。

でも所詮高校生。

お酒も飲めない。

レポートだって手伝ってあげることも出来ない。

この歳の差は、埋まらない。

「みょうじ」
そっと左耳に少し特有のかさつきのある指先が触れる。
「ぼ、くとさん?」
「ちーがーう!光太郎!」
「‥光太郎」
そう、ゆっくりと名前を紡げば木兎さんは私の大好きな日だまりの笑顔をくれて、
そっと私を抱き締めてくれた。
「みょうじ、俺みょうじ大好きだからそのままでいいぞ!無理に化粧もピアスもしなくていいからな!」
どんなみょうじでも大好きなみょうじにかわりねーから!

そう、太陽みたいに笑う木兎さんにああかなわないなと諦めてキスをした。


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