僕が殺した(悲?/シリアス?)








ボロボロになった女性、姫が
ひゅうひゅうと苦しそうに
呼吸をしながら、僕に言った

「人間の、と言うより、生き物の死というものは、呆気ないものなんだよ。本当に、呆気ない。さよならを言う暇もないほど短くて、それはそれは、呆気ないものなんだよ。それでいて、命が始まるのには時間がかかる。壊すのは簡単だけど作るのは大変なんだよ」

「それは、命乞いですか…?」

どうか、そうだと言って
そうすれば僕は
貴女を殺さなくて済むんです


「いや、ただレギュに、命の重さを知ってほしかっただけだよ」

もう私は動けない、
さあ、殺しておくれよ


***


「頼む、助けてくれ…!!」

僕の足に必死にすがり付いて、
泣き喚き命乞いをする男の声ではっとした

「何でもする、だから、どうか…!!」

ボロボロな姿は姫と同じだった
しかし、それ以外は何もかも違った

男も姫と同じ騎士団の人間だが
彼女同じ志を持っているなんて
思えなかった
思いたくもなかった

彼女は醜く命乞いなどしなかった


「何でもすると言うのなら、どうか死んで下さい」


僕は男の言葉を無視して
酷く冷めた声音で
短い呪文を唱えた

終わりの呪文だ
緑の閃光が男の体に当たると
男は動かなくなった
たった一言、それだけで
死んだんだ

僕はもう何人も殺した

たった一言で散る命は
羽よりも空気よりも軽く感じた
麻痺した心では
彼女が伝えようとしていた
命の重さなんて
わからなかった


「姫…」

小さな声で愛した女性の名を呼んでみた
そうしたら、心の奥が冷たくなって
目の前が暗くなった気がした

明日の朝の新聞にも
また帝王の名が印刷されるだろう
闇に呑まれていくのは世界か
それとも自分か

僕の質問にいつも答えてくれた
光の様な人は


僕が、殺した




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