最後の夜(切?/甘)


※学生リーマス






姫の姿が見えなくて
彼女のお気に入りの場所である
天文台までやってきた
案の定姫はそこにいた


「リーマス、あのね、」

僕が声をかけようとしたら
彼女が先に話し出した

「私、夜が嫌いなの」

彼女はこちらを振り返ることなく
沈んでいく太陽を
じっと見つめながら
まるでそれを捕まえるかの様に
自身の手を伸ばした

「奇遇だね、僕も夜は嫌いなんだ」

─特に月の出る夜はね

そう言って笑ってやれば
彼女は悲しそうに眉を寄せて
ぽつりと呟いた

「私も嫌いよ。月の出る夜は特に…あなたが連れていかれちゃうから」

言い切ってパタン、と
手を下ろした姫に
僕はごめんね、としか言えなかった

「あなたが謝ることじゃないわ」

「…ごめんね」

それからは二人共無言で
沈み行く太陽を
じっと見つめていた


「また夜が来ちゃうね」

姫は、もう半分くらいしか
見えていない太陽に
視線を向けたまま言った


「…怖いかい?」

「ええ、怖いわ。あなたが連れていかれちゃうかもしれないもの」

そう言って姫は悲しそうに僕を見た
だから僕は笑って言った

「なら、一緒に逃げればいいさ」


どこに?
そうだな、夜が来ないところに
そんな所きっと無いよ
西に向いて飛び続ければ夜は来ないよ
そんなの疲れちゃう
なら夜を消せばいい
月は?
爆発でもさせて撃ち落としてしまおう
睡眠は?
昼寝で充分さ
いつ行くの?
今すぐにでも


「じゃあ、一緒に逃げましょう」

「ああ、そうしよう」


僕らは手を繋いで
天文台の階段を駆け降りた

その途中で見えた夜は
今まで生きてきた中で
一番優しかった気がした



最後の夜を目に焼き付けた




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