手紙と死者と(切?/甘?)








親愛なる姫先輩へ


先輩がこれを読んでいるということは、もう僕はこの世にいないでしょう。
なんて、ありきたりな出だしですね。
でも、きっともう、僕はこの世にいないでしょう。

そんなことはさて置き、先輩に言わなくてはならないことがあります。
何も言わずに消えて、勝手に死んで、すみませんでした。
詳しいことは、今はまだ言えません。先輩がこちらに来たときにお話するので、それまで待っていてください。

それから、こちらに来るまで、出来れば独り身のままでいてくださいね。
僕が先輩をもらって差し上げますから。

好きです姫先輩のことが。
先輩も同じ気持ちだとしたら嬉しいです。

それでは、またお逢い出来る日を楽しみに、こちらで気長に待っています。


R.A.B


***


ランプの光しかない部屋の中で
私は手紙を読み、それを封筒にしまった

元々茶色っぽい色をしていた羊皮紙は
長い年月を経てさらに茶色く日焼けして、
封筒なんかは元が何色だったかなんて
わからないくらいに色褪せてしまった
綺麗な文字も心なしか薄れている


「あれから十年だね」

誰に言うわけでもなく
ただ口に出してみれば、どこかで
“先輩もオバサンになりましたね”
なんて声が聞こえた気がした

「オバサンはこのまま君の所に行くよ」

私は左手の薬指に口付けを落とした

そこには、手紙の送り主が
まだ生きていた、学生だった頃
クリスマスプレゼントとして
ホグズミードのアクセサリーショップで
私に買ってくれた指輪がはまっている

「あと数十年、待っててね」

私は手紙を机の引き出しにしまい
もう一度、左手の薬指に口付けを落とした



手紙と死者と
それから指輪




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