僕達(切)








「シリウス、死んだんだってね」

ポツリと呟かれた言葉は
あまりにも重かった

「っ、あぁ…」

どこからそれを聞いたのか
何故知っているのか
聞きたいこと、言いたいことは
山ほどあったのに
僕の口から出たのは
肯定の言葉だけだった


「そっかぁ…」

─またひとりぼっちになっちゃった

そう言って力無く笑った姫の頬には
涙が伝っていた


彼女は学生の頃から一人だった
両親を早くに亡くし
随分と遠い親戚の元で
良いとは言い難い環境で
育てられたのだと聞いたことがある


ひとりぼっち、という言葉が
やけに寂しく響いた


「…まだ僕がいるだろう?」

姫の瞳には情けない顔をした
僕が写っていた

まるで傷の舐め合いだ
それでも、
これが一番良い方法だと思った

僕は右手を差し出して
彼女をじっと見つめ
紡がれる言葉を待った


「傍にいてくれるの?」

ややしばらくして返された言葉は
まるで小さな子が
悪事を認めて謝る前に
怒らないか、と聞いてくるのと
似た響きをしていた


「ああ、君が望むならね」

だから僕は笑って答えた

「ありがとう…」

姫も笑っていた
今度こそ泣かずに
けれど、どこまでも切な気に


「でも、やっぱいいや」

続けられた言葉に
ああ、やっぱりね、と
妙に納得した僕は
笑って手を下ろした

それから二人で抱き合って、泣いた


隣に居ても、
顔を見合わせても、
抱き締めても、
手を繋ぐことだけはない

僕達は近くて遠い



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