魔法使いの手(微糖/パロ)


※学生パロ






「やめなよ」

自分の席に座っていた私の目の前に
いきなり現れた猿飛は
ただ一言そう言った

何をやめろと言っているか
わからなかった

「何が」

「手、痛くなっちゃうでしょ?」

そう言われてはっとした
イライラしていたからか
気付かぬうちに
手の甲をつねっていた

甲にはくっきりと爪の痕がついていて
心なしか血が滲んでいる


「別に、痛くないよ」

「俺様が痛くなってきちゃうからやめてよ」

私よりも大きくて骨張っていて
それでいてしなやかな手が
私の手と重なった


「最近疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

「大丈夫」

っていうのは嘘

「嘘はダーメ」

「嘘じゃないよ」

っていうのも嘘


猿飛は大袈裟に溜め息をついて
それから笑って言った

「とりあえずさ、疲れてるみたいだし、ゆっくり深呼吸しよっか」

笑ってるくせに
どこか真面目に言うものだから
仕方なく、言われた通りに
深呼吸をしてみることにした

「大丈夫、段々落ち着いてくるからね」

そうしていてると
確かにキモチが楽になって
イライラがすうっと消えていくのがわかった

代わりに、重なってる手に
ちょっとドキドキした


嘘を見抜嘘を見抜いたり
落ち着かせたり
ドキドキさせたり
いろいろなことができる猿飛は
もしかしたら魔法使いなのかもしれない



魔法使いの手




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -