優しいテノヒラ(切?/死)








どくんどくん、と
心の臓が強く波打つのがよくわかった
まるで耳元にそれがあるかの様に
はっきりとわかった

ここはこんなにも
大きな音を出して動くものなのか

ぼやける頭で考えてみた

考えてみてわかった
自分は死ぬのだと

そうだとわかると安心した

死にたくないとか
まだ生きていたいとか
不安や恐怖を感じることはなく
何故か酷く安心した
それから気持ちが軽くなって
ふっ、と気が抜けた

心と反比例する様に
身体はずっしりと重くなった


霞む視界の片隅で
綺麗な銀色がこっちに向かって
走ってくるのが見えた

瞼が重くなってきて
目を開けているのも億劫だ
そう思う反面
まだ見ていたいと思う自分もいる

何とか瞼を持ち上げて
自分の真横にやってきた銀色を
視界の中心に捕らえる


何か言いたいのに
何を言えばいいのか
ぼやけた頭ではよくわからないし
喉からは音にすらならない
掠れた空気だけが抜けていく


「喋るな!じきに刑部も来る、そうしたら手当てを…」

頭を左右に振って
もう駄目だと伝える

もう駄目なんだ
助からないんだ
わかってるでしょ

「っ私を置いて死ぬことは許さない!姫!!」


私の頬に触れた銀色の手は
やけに優しく温かくて
心地好かった

その温もりを感じながら
私はゆっくりと瞼を閉じた



優しいテノヒラ




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