感情が生まれた(悲/切?)


※姫=戦忍






ザアザアと雨が地を濡らす

目の前には
雨で滲んで広がっている赤い血溜まり
その中心には、姫がいる
俺は、ついさっき
心臓を動かすことをやめた姫を
黙って見下ろしている


「…姫」

絞り出した声は
やけに掠れていて
我ながらみっともなかった


“私は佐助の笑った顔が好き”

それが最期の言葉だった
姫はそう言い切るや否や
ゆっくりと瞼を閉じて
それ以後、目を開けることはなかった

ずぶ濡れになっていく俺と姫
こうしている間にも
姫の体温はどんどん奪われて
冷たくなっていく


姫は俺と同じ戦忍のくせに
いつでもどこでも、よく笑っていた
俺とは違う、本当の笑顔で

そして、笑うのと同じくらい
よく泣いていた
戦忍のくせに、誰かが死ぬ度に
膝を抱えて泣いていた


感情なんて忍には必要ない
そんなものは捨てろ
そう教わったはずなのに
姫はいつまでたっても
感情を捨てなかった

俺は捨てた
確かに捨てたはずなのに

“笑った顔が好き”なんて

本当に、なんて言葉を
残してくれたんだ
そんな事言われたら、
俺は、俺様は─

「笑っちゃうしかないでしょーよ」


いつもみたいに笑ったら
頬を雨よりも暖かいものが
ゆっくりと流れていった

感情、捨てたはずだったのにな




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