白くなかった骨(切?/シリアス/死)


※姫=女武将(元豊臣傘下)






負の感情を糧にして
復讐のためだけに生きていた、
と言っても過言ではない様な男に、
私は言ってやった


「三成、あんたはきっと何処までも、それこそ骨の髄まで怨みや憎しみでできているんだろうね」


男は牢獄の中から
こちらを見向きもせずに
たった一言、
くだらん、とだけ呟いた


「きっとあんたの骨は真っ黒だ。そうにちがいない」

「…だとしたら、何だというのだ」


男はやっと私を見た

最後に牢獄の外で見たときよりも
随分と痩せ細った様に見える
元々雪の様に白かった肌は
病的な青さに変わり
すらりとしていた手は
骨が浮き出ていた


「真っ黒な骨なんて、そんな気味の悪いもの、私は見たくないんだ」

「ならば、見なければいい。半兵衛様にも認められた程の頭を持っている貴様のことだ、そんなこと分かるだろう」

「そういう訳にもいかないんだ。関ヶ原でどちらにもつかなかった私は、あんたの斬首に立ち会わなきゃならないとお達しが来たもんでね」


私がそう言うと
男は鼻を鳴らして笑った


「では、諦めろ」

「簡単に言ってくれるなよ三成。…私は、あんたが死ぬのを」

「姫、貴様はもう帰れ」


それが本当に最期の会話だった
男は私にくるりと背を向けて
すっかり黙ってしまった


数日後、男は六条河原で斬首された

私もそれに立ち会った
執行人はそれはまあ素晴らしい太刀筋で
スパリと男の首を落とした

ころり、転がった首から見えた男の骨は
真っ黒に見えた


「やっぱりな、黒い骨など気味が悪い。何故こんなものを見せたんだ」


私がそう呟くと
隣にいた太陽の様な男が
三成の骨は真っ白だぞ、と
不思議そうに言うものだから
私は泣きながら訴えた


「いいや、いいや、三成の骨は真っ黒だ。ああ、見たくなかった、私は見たくなかったんだ。何故…死んでしまったんだ」


泣き崩れた私を
太陽の様な男は悲しそうに見ていた


チラリと視界に入った生首
その断面から見えた骨は
やはり白くなかった



白くなかった骨




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