僕が死んで残るもの
(切?/シリアス/微糖?)



※姫=豊臣傘下






僕が死んだら
きっと、何も残らない
肉はすぐに腐って土に還るし
骨だってそうだ
肉より時間はかかるけれど、
最終的には土に還る

それに、そもそも
死んだら火葬されるんだ
肉なんかは燃え尽きて
灰にすらならないし
骨は細かく砕けて粉っぽくなる
そうしたら、
そのままの状態よりも
はやく土に還ってしまう

「結局何が言いたいかというと、僕の肉体は本当に何も残らないということだ」


僕が長い前置きを終えてそう言うと、
話を聞いていた姫は
視線を畳に落とした

「半兵衛にしては、いつになく弱気な発言だね」

「いいや、ただ事実を言っただけさ」

笑って言ったら咳が出た
蝶が羽ばたく様な
パタパタとした嫌な咳だ

その咳を聞いた姫は
僕に近寄ろうとする
それを片手を上げて制すと
彼女は一瞬だけ酷く悲しそうな表情をした


「すまないね」

「半兵衛が謝ることはないよ」

姫はそう言いながら
空になっていた僕の湯飲みに
茶を継ぎ足した
それから、そうだ、と呟き
話し出した

「半兵衛が死んでも残るもの、あったよ」


僕は茶をすすりながら
目線で先を促した


「悲しみと、半兵衛と過ごした記憶」

悲しみは確かに薄れるけれど
完全になくなりはしないだろうし、
記憶はその人が忘れない限り
永遠にのこるんだよ
私は絶対に、私が死んでも
半兵衛を忘れたりしないから
私と半兵衛の記憶はなくならないよ

ただ、半兵衛と話しができないとか、
半兵衛に触れないとか、
そういうのだけは嫌だな…

「結局何が言いたいかというと、簡単に死なないでってこと。足掻いて足掻いて、生き抜いてみせて」


話を聞いてみれば、なるほど
確かにそれは残るのかもしれない

「最善を尽くそう」

僕がそう言うと
姫は儚げに微笑んだ



僕が死んで残るもの


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