名無しの涙(切?/シリアス?)








真っ暗などこかにいた

俺様は忍だから暗闇には
慣れているはずなのに
どんなに目を凝らしても
何も見えなかった

これは何かの罠なのかもしれない
そう思って
周りの気配を探ってみたけど
やっぱり何もわからなかった

どうしたのかと考えていたら
遠くで一ヵ所だけが
ポツリと明るくなった
一気に意識を集中させて
その明るくなった場所を見てみると
そこには何故か姫がいた

鼻をすする音と
僅かな嘔咽が聞こえた
泣いているというのは
すぐにわかった
俺様は慌てて近づいた


「姫、」

声をかけてみると
しゃがみこんでいた彼女は
ゆっくりと顔を上げて
俺様の名前を呼んだ

「どうして泣いてるの?」

目線を合わせる様に
しゃがんで問いかけると
姫は目線を反らして呟いた

「汚いからよ」

俺様はびっくりした
彼女のどこが汚いというのだろうか
どこも汚くなどないというのに

「姫は汚くなんかないよ」

「いいえ、汚いわ」

彼女はまた泣き出してしまった


いよいよ困った俺様は
ただ、泣かないで、
としか言えなかった

俺様はたぶん泣いたことがない
だから人が何故泣くのか
わからなかったし
どうすれば泣き止むかなんて
知らなかった

呆然と立ち尽くしていると
姫はいきなり静かになって
それから俺様の目を
真っ直ぐに見つめて言った

「涙は汚いものを洗い流すために出るの」

だから佐助は泣かないでね
あなたは綺麗だもの



目が覚めた

久々に布団なんかで
寝てしまったせいか
妙な夢を見た
その夢には
先日死んだはずの
姫が出てきていた

血で汚れている俺様を
綺麗だと言ったのは
たぶん彼女が最初で最後だろう


ぼんやりと考えていたら
頬を冷たい何かが滑り落ちていった

俺様の頬を伝うこれは
一体なんという名前だろうか


名無しの涙




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