君の音が沈んだ(悲/死/血)


これの三成視点






刀と刀がぶつかり合う音
大勢の人々と馬の駆ける音
銃弾が放たれる音
断末魔の叫び声

正に戦場
一瞬の気の緩みが死に直結する


周りの敵を斬滅し
少し離れた所にいる部隊の
援護に行こうとした時だった

「三成様!」

駆け寄ってくる足軽
名は知らない

この戦場で声をかけてくるということは、余程の事があったのだろう

「何だ」

私は短く、その足軽に問うた

「姫様が…っ!」


息が止まるかと思う程の衝撃だった

自分の耳を疑った
これから援護に向かおうとしていた部隊の隊長であり、私の唯一無二の存在である姫が
流れ弾に当たり瀕死の状態である、と


そんなはずはない
そんなはずはない
そんなはずはない
きっと見間違いだ

馬を走らせながら
先程足軽から聞いた話を
必死に否定する


しかし、戦場の隅の林の木に
目を瞑り背を預けて座る姫が視界に入った途端、その期待は裏切られた

かなり離れたこの場所からでもわかる程、姫の腹部は赤く染まっていた


「姫ッ!!」

周りの敵を薙ぎ倒しながら
姫の方へと進んでいく

目を瞑っていたはずの姫は
私の声が聞こえたのか
瞼を開けこちらを見た

「姫ーッ!!」

もう一度、大声で姫を呼ぶ

すると、姫は一瞬だけ、笑った
しかし、次の瞬間
瞼は閉じ、笑顔も消えた


それ以降は覚えていない

気が付けば、周りには
斬滅した奴等が転がっていて
私は血溜まりの中で
姫を抱き抱えていた

腕の中の姫からは
何の音も聞こえなかった
呼吸をする音も
心の臓の動く音も
何も


雨が降ったのだろうか
私の頬が僅に濡れていた



─君の音が沈んだ

 何故、何も聞こえない



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