海底へさようなら(シリアス?/パロ)


※学パロ






本当の自分というものは
自分以外の誰も知らないし
自分以外の誰にも分かりはしない
だからこそ
自分という殻に閉じ籠りたい
海底の貝のように
殻に閉じ籠って
自分という存在に深く沈んでいたい

それなのに
いつもアイツが邪魔をする

殻に閉じ籠って
海底に深く沈みたい私の腕を
引っ張って浮上させるみたいに
日陰から日向へ連れ出す様に
アイツは笑いかけてくるんだ

どんなに酷く振り払っても
何度も何度もやってくる


「ワシと一緒に帰らないか?」

人影も少なくなった教室で
また声を掛けられた

「…ほっといてって言ったでしょ」

「そんなこと言うなよ」


コイツには分からないだろう
私のことなんて


「なあ、ワシと一緒に…」

「…っ何も知らないくせにこれ以上関わらないでよ!」

怒鳴り付けて右手で
アイツの頬をひっぱたいた
パシン、と乾いた音がした
教室に残っていた数少ない人は
何事かとこちらを見ていたり
そそくさと帰ったりしていた

アイツは叩かれた頬に手を添えて
悲しげな眼差しで言った

「姫、お前の気持ちは痛いくらいわかるさ」


その瞳を見たとき
ああ、コイツも同じなんだな
と、思った


疲れたんだと思う
本当の自分を
知ってもらえなくて
分かってもらえなくて


コイツは私を浮上させるために
引っ張っていたんじゃなくて
逆に引きずり込まれたくて、
海底に沈み込みたくて、
笑いかけて来たんじゃないかと
アイツの瞳と
じんわりと痺れる右手で、感じた



海底へさようなら




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