絶命レース(切?/狂?)


※姫=豊臣傘下






秀吉様が亡くなってから
あいつは変わった
ことある度に刀を突き付けながら
貴様は裏切るな、と
そればかりを狂った様に言う

今だって、そうだ


「姫、貴様は裏切るな!」

「だから、裏切らないって言ってるじゃないか」


三成はあたしを自室に呼んだかと思えば
行きなりあたしを押し倒して
馬乗りになった
しかし甘い雰囲気なんてものはない
三成はあたしの顔の真横の畳に
刀を突き立ててすごい剣幕で喚いている

驚きはしない
初めてではない、もう慣れた
秀吉様亡きあとはしょっちゅうだ

また畳を買わなくてはならなくなった
面倒なことだ
なんて考えていたら
再び刀が畳に突き刺さった


「なら今すぐに家康を殺せ!」


またこれだ
裏切るなの次は家康を殺せ、だ
先日刑部に、時が来るまで待て
と言われていたのに
もう忘れてしまったのだろうか


「今はまだ駄目だ。刑部も言ってただろ?」

「貴様は、私を、裏切るのか!?」

「裏切らない、大丈夫だって」

三成の頬にそっと手を添えて
まるで幼子に言い聞かせる様に
ゆっくりと言ってやれば
三成の勢いは嘘の様に静まって
代わりに何やらブツブツと言い出した


「おい、三成…」


退いてくれ、と言おうとして
あたしは固まった
三成は泣いていた
それなのに笑っている


「…三成」

「時間をかけて絶望の淵に追い詰めてやる…」

「三成」

「復讐だ…!家康のありとあらゆるすべての絆を断ち切って私と同じ苦痛を、いやそれ以上の苦痛を与えてやる!!」

「…聞こえてないのか」


三成はどのくらいの間
独り言を言っていただろうか
しばらくすると行きなり立ち上がり
部屋を出ていった

一人取り残されたあたしは
起き上がりもせず
顔の真横に突き刺さったままの
三成の刀を、ただただ見つめた


あたしの声に気づくのと、
あんたか家康が死ぬのと、
いったいどっちが早いかな



絶命レース
(よーい、どん)




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