死に損ないのシセン(シリアス?)


※姫=豊臣傘下(女武将)






利き腕が動かなくなった

原因は先日の戦だ
その時受けた傷が
思いの外深くて
どうやら神経を
切ってしまったらしい

だらりと垂れ下がる腕は
肩から先の感覚がない

もう刀を握って
戦場を駆け巡ることは
できなくなった

それは大きな絶望として
重くのし掛かってきた

私とて武士の端くれだ
戦えぬなら、残された道は一つ


私は自室に鎮座し
片腕でぎこちなく刀を抜いて
首筋にピタリとあてがった
遺書も残した
何もかも準備は万端だ

姿勢を正して刀を握り直した

すると開くはずのない襖が開いた

「姫、ちょっといいかな」

気にせずに一気に刀を引いた


はずだったのに


「…邪魔、しないで」

一瞬で私の刀に絡み付いた
半兵衛の凛刀によって
引くことの叶わなかった刀は
ギチギチと不快な金属音を立てた

無理矢理にでも引こうとしたら
そのまま刀を奪われてしまった


「ッ君は馬鹿か!?」

刀を奪った半兵衛は
自らの刀も納めて
私の真上から言葉を降らせた

「そりゃあ天才軍師様と比べちゃえば頭悪いよ」

嫌味っぽく返せば
一気に空気が悪くなった


「一応聞こう。何をしようとしていたんだい」

「死のうとしたの」

「…何故」

「もう使えないから」


だらりとした腕を
反対の手できつく握ったが
感覚は、ない

もう刀を握れない
もう戦えない
だから死のうとしたの、
続けてそう言えば
半兵衛は再び
君は馬鹿か、と呟いた

しばらくの沈黙の後
半兵衛はストンとしゃがんで
私に視線を合わせると
囁く様に言った


「どうしても死にたいなら、僕が殺してあげるから、それまでは…死なないでくれ」

私はただ、頼もしいね
とだけ返して視線を反らした

半兵衛の悲し気に揺れる瞳を
見ていられなかった



死に損ないのシセン




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -