真っ赤な私を覚えてて
(シリアス/死/パロ)



※現代パロ






誰かが言っていた
生きることは刑罰だ、と
確か、犯した罪を償う為に
汚い人間界に来て、
償ったら天国に帰るんだったかな
よく覚えていないけれど
たぶんそんな感じの話だったと思う

「要するに、人間は死ぬことによって、罪という名のこの世の全てのシガラミから解放されて、痛みも苦しみも恐怖も悲しみも全てを捨てることができるんだよ」


屋上のフェンスの
向こう側に立つ姫は
こちらを見ながら
つらつらと音を吐き出した

風が彼女の髪や衣服を
バタバタとはためかせた


この高さから飛び降りれば
さすがに死ねるだろう

「ひとつ、聞いてもいいかな」

僕が静かに問えば
姫は目を細めて促した

「なぜ、飛び降りるんだい?」

─他にも死に方はあるだろう?

僕は疑問を口にした


死にたいのならば
飛び降りなんかよりも
確実に、綺麗に、
死ねる方法はあるはずだ
それなのに彼女はあえて
飛び降りることにしたのだ

僕が黙って回答を待っていれば
姫はクスクスと笑いだした

「そりゃあさ、半兵衛に─」

言葉が聞こえた瞬間
彼女の体がフワリと舞った


慌てて柵の下を覗いて見れば
なるほど、姫が飛び降りを選んだ
その理由がよく分かった


(私を忘れてほしくないからさ)



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