紛れて消える(切?/悲?)


※姫=忍






「俺様は姫が嫌い」

私は佐助のことが好き、
そう言ってしまえば
完璧な笑顔を張り付けた
お前の顔は、きっと崩れ落ちて
悲痛に歪ませてしまうだろう

そうなったらもう
お前は私を殺せやしない

だけど、それは私も同じ
お前に好きだなんて言われたら
殺せるわけがない

だから私もにっこりと
完璧な笑顔を張り付けて
自分に嘘をついて、
闇の向こうで
苦無を握りしめている
佐助に言ってやるんだ

「私も佐助のこと嫌い」

それから、
お前に聞こえる様に
わざと大きな音を立てて
苦無を取り出してやるんだ

「お前はここで殺す」

そう言ってやれば
佐助の気配が一瞬だけ
本当に一瞬だけ震えたけど
気付かないフリをして
殺気を滲ませて
佐助の次の言葉を待つんだ

「その言葉、そっくりそのまま返すよ」

闇の向こうで
気配が笑った、悲しそうに
私も笑った、泣きながら


風が二人の間を裂く様に吹いて
お互いに獲物を握りなおした


私がお前に殺されることで
お前が生きていけるんだったら
殺されてやっても構わないけど
お前は優しいから
そんなことはきっとできないよ

なんてことすら
考えなかったことにして

私はただ、
お前に殺されてやるために
地を蹴った



僕らの感情は、
闇に紛れて消える




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